2日目第7試合後半

※グロ注意









 楽しい! 最高だ! 恐怖も痛みも苦しみも不安も絶望も、全部がどこか遠くのほうに飛んでった!


 地面に胃の中の者をぶちまける。まるで自分の余分な部分が抜けていくような、自分の汚れが取り除かれていくのような、とにかくスカッとする。

 歯がまた1本抜け落ちた。ぼろっと歯が口から零れ落ちるのを見ると、言葉に表せないような嬉しさがこみあげてくる。


 顔をあげ観客席を見回すと、吐きそうになっている観客を見つけた。

 おっと、よいこはマネしないでね!


 次は何をしよう!?


 そうだな♪ そうだな♪ 取りあえず視覚はいらないかな!


 おもむろに人差し指で右の眼球をなでる。視界が赤く染まった。観客が恐々と見守る中、人差し指を差し込み眼球を抉り出す。

 何かが切れるような感覚とともに、ずるりと眼球を抉り出した。


 まず1つ! どんな味がするんだろう? 土よりはおいしいかな? いただきまーす!


 口の中に放り込み、下で眼球をなめ回す。下の上をころころと転がって、まだ残っていた奥歯のほうに運んでいく。歯と歯の間に到達したら、一気に噛み潰す。ぶにゅりと潰れ、何とも言えない味が口の中に広がった。


 ううん、味はよくわかんないな? 血の味しかしない。まあいいいか! 触感はぬめぬめした焼き鳥の皮みたいで面白いな!


 しばらくその触感を楽しみ、飲み込んだら次は左の眼球を抉り出し、口に含み、咀嚼し飲み込む。


 なんか目の奥がスースーするなあ。よし、ティッシュでも詰めとくか!


 手探りで地面に落ちたポケットティッシュを探して、拾い上げ数枚のティッシュを取り出した。くしゃくしゃに丸めて、ぽっかりと空いた2つの空洞にティッシュを詰め込む。


 おお! ピッタリだ! やったぜナイス俺!


 今度は……鼻だ! 最近鼻づまりが酷くて困ってたんだよ! ちょうどいい、嗅覚もいらないし、鼻を壊そう!


 地べたに土下座し、一心不乱に顔を地面に打ちつける。頭を大きく振るとティッシュが落ちるので、手でない目を抑えながら鼻を地面に打ちつける。鼻血がダラダラと流れ、鼻の骨が折れて形がひしゃげる。


 もっとだ! まだまだ物足りない! もっと楽しく! もっと面白く!


 鼻がおかしくなったから次は耳を地面にぶつける。一思いに、ガツンと。


 なんか土下座してるみたいで面白いな! これ周りから見たらめっちゃ面白いだろうなあ! はははははははははははははははは!


 右の耳と左の耳、それだけでなく顔中をまんべんなく打ち付けて壊していく。亜顔中に傷ができ、黄色の皮膚は赤で染色される。


 ああ! 目が取れちゃった! 楽しいなあ♪


 ぼろぼろになった顔をあげる。歯がまた1つ抜け落ち、膝の上を転がっていく。


 人間って脆いなあ! 人間って非力だなあ! 脆いから簡単に壊せるけど、非力だから壊せないや! 矛盾してるじゃん! ははっ♪


 次はどうしようかなあ♪ どこ壊そうかなあ♪ ああっと、忘れるとことだった! 目、取ってこなくちゃ! やっぱりいいやめんどくさい! また詰めよう! 今度はもっとたくさんだ! 挑戦だ! このポケットティッシュの残りを全部詰めよう!


 早速空洞に指を突っ込んで、中を掻き回――――


「そこまで!」


「観客席に大きな影響を及ぼしたため、虚選手を反則負けとする!」


 え!? おしまい……?


 なんだよ! 俺はまだ途中なんだよ! ふざけんなよ俺の邪魔すんなよ!


 ってあれ? おかしいなぁ。変だなぁ。


 突然目の前が真っ暗になったような、既に視界が真っ暗なのに、そんな感じがした。


 なんか眠い……。これで……おしまいかぁ……。


 最高のショーはこれにて中止となった。

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