第147話食客ノンキ

ダワパッチャの軍勢は逃げた、一部のゴブリンとダワパッチャは大人しくお縄となる。


何だかんだと一段落した頃に、族長が現れた。

痛めた腰を庇いながら、孫娘のリーダーゴブリンに抱えられてノンキの元へと来たのだ。


「おお!、ノンキ殿。予想外ですわぃ…」


族長としては、ノンキの穏和な性格でなんとか話し合いにより、なんとか一族が生き残れる様に、族長一匹の首でなんとか収まらんかなぁと楽観視もしていたのが事実だ。


まさか勝利してしまうとは天地がひっくり返る程に思いもしなかったのだ。


何故無理に族長が連れられて来たのかと言えば

ダワパッチャの事である。

リーダーゴブリンの親の仇でありすなわち、族長ゴブリンの娘夫婦の仇でもあるのだ。


「お主がダワパッチャか…」


族長ゴブリンの目に光るものがあった、娘夫婦の事を思い出したのだ。


リーダーゴブリンは槍を構える


「父様と母様の仇!!」


しかし槍の穂先はダワパッチャに届くことはなかった

ダワパッチャは動かない、敗者の行く末を自分は勝者として今まで振るってきたのだ。当たり前の事、自身の死になんの感お情も抱いていなかった。


敵討ちを止めたのはノンキではなかった。

止めたのは族長ゴブリンだ。


リーダーゴブリンは驚いた目で族長ゴブリンを見た。

どうして!?とその目は語っている。


「わしらは勝者ではないのじゃ」


と族長ゴブリンは首をふった


「何を言っている!ダワパッチャに勝ったんだ!」


そうリーダーゴブリンが声を上げた!


「勝ったのはノンキ殿じゃ、わしらは救われただけじゃ」


そう言って族長ゴブリンは、うとうと舟を漕ぐノンキを見た。


リーダーゴブリンの手からぽとりと槍が落ちた。




翌朝、ダワパッチャの処遇を決める会議が行われた

と言っても決めるのはノンキである。

ノンキとしては、両軍に死傷者がなく(ノンキの左手と右腕、脇腹、リーダーゴブリンの手の痺れ、ダワパッチャのプライドがへし折れた位)ほんと良かったなぁと思っていたのだが、ダワパッチャは族長ゴブリンとリーダーゴブリンの家族の仇であると聞き、内心穏やかではない


しかし、ダワパッチャもよくよく話すと気の良いゴブリンであり処刑するには惜しい。


結論が出ず、お昼休憩に入ろうとしていた時に、

戦士ゴブリンが、入り口を覗き込んでいた。


「おお、どうしたのじゃ」


族長ゴブリンがそれに気付き声をかけた。


「お話し中、申し訳ありませんが…」


戦士ゴブリンに少し迷いがあるように見えた。

どうやら少し困たった頼まれ事をされているようだ。


「ほれ、言うてみぃ。内容が分からねばノンキ殿も困られよう。」


族長ゴブリンの言葉に戦士ゴブリンが話し始めた。


「その…捕虜のゴブリンから、ダワパッチャの処遇について話をしたいと…ダワパッチャ軍の副官と名乗るゴブリンです。」


「ふむ、とりあえず連れてきなさい」


族長ゴブリンがノンキの返事を待たずに話を進める

まぁノンキにはなんの不満も無いのだが。



ゴブゴブ、ボブボブ、ボスボス言うてます。

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