第138話ダンマス分身

遠くでキュイキュイとルビーの声がしたが

危険性は無く、楽しそうな声なので放っておく。お腹が空けば戻ってくるそういう奴だ。


ほら戻ってきた、機嫌が良さそうに飛んでいる。クルクル回っている。おやつの時間ならピューンと一直線に突撃してくるが、おやつの時間まではまだまだある。


遊んで小腹を空かしたのかも知れないので

昼食にはまだ少し時間があるが用意を始めるか。


ルビーは森に入って勝手に腹を満たす事が多いが、最近ではダンマスの能力で取り寄せする物の味をしめて、おねだりする事も多い。

本拠地よりも割高であるため、多用する事は控えていたりもする。



空中を飛んでいるルビーに目がいき、地上をトテトテと走る存在に気付くのが遅れた。

初めに気が付いたのは驢馬のウマだ。

何があろうと、戦闘があろうと我関せずを貫く精神力の持ち主であるウマが草を食むのを止めたのだった。



ルビーはキュイキューイと甘えたような声で鳴いている。目の前には知らない女の子がポツーンと此方を見上げていた。


是非とも説明を求めたい所ではあるが

ルビーにそれを求めても仕方がない。

今鳴いているのは、誉めてご褒美をくれって

時の鳴き声であるのは確かである。


前にも同じような事があったような気もするが、今はスリスリと頬擦りするルビーにご褒美をあげるのが先か、最近鱗が硬くてちょっと痛い。



びっぐなカツの袋を開け、食べやすいように半分に千切りルビーにあげる。何時ものようにクチャクチャと美味しそうに食べ始めた。


手に持つ残った半分のびっぐなカツとルビーを少女が交互に見た。

食べるかい?と声を掛けると小さく頷いた。

口に入れると大きく目を見開いて大事そうにゆっくりと食べ始めた。


ふーむ、状況からみると村の生き残りか…

お母さんは?と聞くが分からないと一言。

困ったどうしたものか、ルビーと仲良く食べている間に村を捜索したが生き残りは居ないようだ。


親戚か知り合いが居ないかと聞くも、分からないようだ。


焼け落ちた村に残しておくのもなんなので、何処か大きな街へと共に向かうことになった。

この世界にあるか分からないが、孤児院の様なものがあるかも知れない取り敢えずそんな施設に頼んでみよう。少女イグニスを連れ旅を続ける。



道中これといった問題も起こらなかった。

イグニスを驢馬の背にのせ歩くこと10日程でそこそこ大きな街へと着いた。街の名はアレンタス。


孤児院も見つかったが思ってたのと違う。

ボロボロな建物、孤児院長であるシスターも痩せ細り

孤児院の子供たちもろくな物を食べさせて貰えないのかガリガリだ。イグニスを頼もうと思っていたのだが

それどころでは無さそうな雰囲気。

どうやら戦争で男手と自警団が減り、その上盗賊の被害が増え食糧事情も困窮しているわ、領主の対応も無く酷い有り様である。

出されたスープは白湯かと思ったわ!


手持ちのお金を寄付し少量であったが食糧も寄付した

シスターのお婆さんが号泣していたのが印象に残る。

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