第137話村の生き残り
突然家の外が慌ただしくなった。
悲鳴や怒号が聞こえる。
血だらけの父親が家へと駆け込んできた。
悲鳴を上げそうになるのを父親が私の口をふざぎ小声で話しかけた。
「イグニス、落ち着いて聞きなさい。
村に盗賊共が押し寄せてきた。すぐにあの場所へ隠れなさい。開け方は覚えているね」
あの場所と言うのは家の地下の隠し部屋だ。
もし何かあれば、魔物や今回のように盗賊が村を襲ってきた場合の非常時に隠れる場所だ
数少ない家の財産も仕舞われているため
普段は入ってはいけない場所なのだ。
「ママは?」
父親は私を抱きしめ、「大丈夫二人で直ぐに戻ってくるから」と外へ飛び出していった。
私は父親の言い付けに従い、隠し部屋に身を隠した。
近くに人の気配を感じた事もあったが、父親か母親なら隠し部屋を開け迎えに来てくれる
そう願って息を殺し、両手で耳を塞ぎ目をつぶり小さく身を屈めた。
いつの間にか眠ってしまっていた。
日が入る窓などは無く、あれからどのくらい時間が経ったのかは分からない。
お腹が小さくクーッとなった。
お腹が空き喉も乾いた。食料はまだ十分に余裕があったが、備蓄していた水は少なく
直ぐに底を尽いた。
喉が乾いた、外へ出ようと何度も思ったが決心がつかなかった。
外からまた物音が聞こえた、コツンコツンと小石が壁にぶつかるような音と、キューイキュイと小動物が鳴く可愛い声が聞こえる。
カサコソと壁を削る音がしたがキューン⤵️
と悲しそうな声が聞こえた。
イグニスの好奇心が父親と約束を上回り
扉を少し開け、外を覗いてしまっていた。
目があった!開いた口が塞がらなかった。
赤くて真ん丸い生き物が羽でパタパタと空中を飛んでいた。
キュイキュイと鳴く赤い真ん丸がふわーっと高く舞い上がり、村の入り口の方へと飛んでいく。
追い掛けようか迷ったが、扉の外へは出なかった。すると赤い真ん丸がフワフワとこちらに戻ってきた。回りをフワフワと飛び、またキュイキュイと鳴いている。
なんだか付いておいでと誘われているような気がして、赤い真ん丸を追いかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます