第109話迷子の少女

「本当にルビーはドラゴンなの?」


年上の少年は真面目な顔で頷いたが

まだ少女は信じられなかった。

当人に聞いてみたら良いとルビーに向かって

同じ質問をしてみた。


ルビーは「キュイ」っと小さく鳴き

少女の周りを誇らしげに飛び回る。

何故かそれが、そうだよ!凄いでしょ!

と言っている様な気がしてきた。


「でも内緒だよ?」


少年に言われて何故?と少女は思う。


「子供のドラゴンはまだまだか弱い存在なんだ。それに、もし子供のドラゴンに何かあれば親のドラゴンが…」


そう言うと少年はブルブルっと震える。

パパが言っていたのは親のドラゴンの事なのだ。


しかし、こんなに可愛い存在が…

やはりまだ信じられない。




その後、少年とルビーと一緒に時間を忘れて

遊んだ。

いつの間にか少女は遊び疲れて眠ってしまったのだ。




「おい、アムネリア?起きるんだ!

こんな所で眠っていると風邪を引くよ?

しかし、なんでこんな所で?」


誰かが名前を呼び肩を揺する。


「あれ?パパ?」


「あー良かった!探したんだよ?

勝手に何処かへと行ってしまっちゃ駄目じゃないか!心配したんだから」


「ごめんなさい…。」


周囲を見回すと森の木陰で眠っていたようで

父親と数人の護衛が心配そうに顔を覗き込んでいた。


「あれ?ルビーは?」


「なんだい?それは?お友達が出来たのかい?」


「えっとルビーはちっちゃなドラ…」


一生懸命に説明しようとするが、そういえば内緒にしとかないとダメなんだとはたと約束を思い出した。


「うんう、何でもないの私つかれて眠っちゃったみたい…」


「そうか、パパのお仕事は終わったから

さあ家に帰ろ。ママが待っているよ」


「…うん!」


一度後ろを振り返るが、突き当たりにあった洞窟が跡形もなく消えていた、本当にあれは夢を見ていただけなのだろうか?

微かに手にはルビーを抱き上げた感触が残っているような気がした。

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