第108話迷子
「パパ?どこ行っちゃたの?」
1人の女の子が泣きながらトボトボと洞窟を歩いていた。
先程まで、父親の足にすがり付いていたのだが、遠くにパタパタと飛ぶ鳥のような赤くて丸っこく可愛らしい何かを見つけた為に
そちらに目を奪われ、追いかけてしまったのだ。飛んでいた何かは洞窟へと入っていきそれを追いかけて自分も洞窟に入ってみたものは良いが中は暗く、道にも迷ってしまい目標も見失った。
泣きながら歩いていると、キュイキュイと何かの鳴き声がした、小動物のような可愛らしい鳴き声がする方へと自然と足が向かう。
鳴き声と光がある方へと進むと、少女よりも年上の1人の男の子と赤くて丸っこいのものが遊んでいた。
「ん?誰だい?今日はお客さんが来る予定だったかな?」
「キュ、キュイキュイ」
「ルビー、全然何て言ってるか分かんないから。ああ、これね、ほら良く噛んで。てかこの女の子の事だよ?」
ルビーと呼ばれた赤くて丸っこいのは、パクパクと何かを咀嚼していた。
泣くのを忘れていた少女に
君も食べるかい?と茶色い物を渡される。
少年と、渡された食べ物を何度も交互に見ていると
「早く食べないと、ルビーが狙っているよ?」
その言葉の通り、赤くて丸っこい鳥のようで鳥ではないものが、少女が持つ食べ物をじっと見つめていた。
迷子の少女は、2つにちぎり片方をルビーに、もう片方を自分の口へと運ぶ。
干し肉の様ではあるが、サクッと歯切れが良く噛むほどにじゅわっと味が染み出してくる
ルビーが好んで食べるのも納得である。
食べ物を分けて貰ったルビーは直ぐに少女になつき、パタパタと飛びながら器用に
少女の顔へとすり寄った。
少しの満腹感で落ち着きを取り戻した少女は
「ルビーは何の鳥なの?」
ずっと疑問であった事を聞いてみた。
「え?」
驚きつつもクスクスと笑う年上の少年に
笑うなんて失礼だなとも思いつつも、怒らせてまたもや暗い洞窟で1人になってしまう
恐怖もあるため我慢をする。
「ルビーは鳥じゃないよ?ドラゴンだよ」
今度は女の子の番だ。クスクスと笑い出し
ドラゴンがこんなに可愛いわけがない
騙そうたってそうはいかないのだ。
女の子はドラゴンを知っている。
と言ってもお伽噺に出てくるような物ではなく、ドラゴンを間近で見た父親から直接聞いた、とてつもなく恐ろしい話である。
人間には抗えないような巨大な力で、人間の無力さをリアルに見せつけられのだ。
それを聞いていた女の子にとっては
目の前にいる丸っこくて可愛らしい
小動物とは言えないくもなく、愛くるしくパタパタと飛び、抱き締めたくなるような生き物が、ドラゴンのはずでは絶対にないのだ!
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