第30話ゴブムサシ
2期生ゴブであり、名前を与えられた1匹であり、二棍棒流創始者であるゴブムサシには弟子がいる。
弟子がいるのも稀であるが、その弟子がニンゲンであることもまた稀であるのだが…。
これは弟子になるニンゲンとの出会いの日
村の防衛班に所属する、ゴブはまだ数が少なくゴブムサシともう一匹の永遠のライバルである、同じく2期生ゴブであり長槍使いの一匹であるゴブコジロの二匹だけだ。
魔物の多い北から北東はゴブコジロが担当し
ニンゲンが多い南から南東はゴブムサシが担当している、その為かゴブムサシはニンゲンに出会う確率も高かった。
ゴブヘイとゴブドウもちょくちょく出会うが
彼らは遊撃班で特に担当する地域は持っていない。
森に入る人間達は、猟師であったり、薬草を採取する村人であったりで、その他の者らは一定以上森の中、ゴブリンの村へとは分け入っては来ないために無駄な争いを嫌うゴブムサシは姿を見せないようにしていた。
しかし、今日は違った。森が騒がしく
魔物がどうやらニンゲンを襲っている節がある。ゴブヘイとゴブドウが今日に限って
北のゴブコジロの助っ人として魔物退治に向かっている為、側にはいない。
仕方なく、ゴブムサシは自分だけで向かうことにした。
ゴブムサシは激戦に次ぐ激戦で顔から身体中傷跡が目立ち、ゴブ達の中でも強面で有名なため、ゴブ太からニンゲンとの遭遇を気を付けるように言われている。
ゴブ達にとっては傷跡は名誉であるしマスターを守った誇りであるため、ゴブ達にはゴブムサシも尊敬の目で見られているが
どうやらニンゲンと言うのは、見た目で判断される事が多いからと、ゴブムサシの知らないところでマスターからゴブ太に注意がいっていたのだ。
現場に向かうと1人のニンゲンが
大きな昆虫の魔物と戦っているのを見つけた
ニンゲンはこのままでは長くは持たないだろう事がゴブムサシには分かったが
はたしてゴブムサシ自身でさえ一匹では
少し心もとない。ゴブヘイとゴブドウが居てくれればと思う。
ゴブムサシは腰に差した棍棒を抜き
昆虫の魔物とニンゲンの間へと分け入った
数十の連撃のあと、生まれた日より使い続けた愛用の棍棒が昆虫の魔物の硬い骨格に
悲鳴を上げ半ばからポッキリと折れてしまった。ゴブコジロの槍であれば昆虫の骨格の間をすり抜け関節部分を上手く斬ることが出来た筈だと悔しく思う。
折れた棍棒を昆虫の顔へと投げ隙を作る
なにか使えるものは無いか?辺りを探すと
2本のナイフを持ったニンゲンが尻餅を付き
腰を抜かしている。
あれならばとニンゲンからナイフを取り上げ
構える。少し短いが何とかなりそうだ。
昆虫の足の攻撃を片方のナイフで捌き、もう片方でその足の関節部分を斬る。
両手で数える程、同じ作業を繰り返すと
とうとう昆虫の前足の一部を切り飛ばす事が叶った。
ナイフの切れ味が悪いし少しばかり軽いな。
そう思えるほどの余裕もできた。
足を一本失った昆虫はバランスを崩した。
その隙を上手く付き、片方のナイフを目に向かい投擲する。目に突き刺さったナイフを足場に昆虫の頭に飛び登り、後頭部の隙間からナイフを突き刺した。
昆虫の魔物は大きな音と共に崩れ去った。
一息付いたゴブムサシは刺さったナイフを2本共抜き、ニンゲンの下へと向かった。
ニンゲンは何故か頭を地面につけていた。
あれはたしか、ゴブ太の兄貴がゴブミ姐さんによくしている、マスター曰く、ドゲザというやつだ。最上の謝罪や礼を尽くす行為らしい。それが何故ニンゲンが自分に…。
命を救ったのは確かだがそこまでされる覚えもない。
とりあえず取り上げたナイフを返すが、
まだニンゲンは同じ姿勢で少し頭を上げ何か話し掛けているが、残念ながらゴブムサシなはニンゲンの言葉は分からない。あっちもゴブの言葉も分からないだろうし…、機微を返し村へと帰ろうとすると終いにはゴブムサシの足へとかじりつくように離さなくなった。
敵意はないがなんなのだ…。
結局ゴブの村へと帰るまでニンゲンはゴブムサシの足から離れなかったので、そのままゴブ太兄貴の下へと連れていった。
ニンゲンの言葉が分かるのは、マスターを除けばゴブ太兄貴しか居ないのだ。
「なんか、ゴブムサシの弟子になりたいって言ってるけど何かあったの?」
(ごぶごぶ言うとります)
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