黒歴史の終わりが俺の終わりだったんですけどっ!?
「アメツチは、授かった
信じると言っても、実際に不思議な現象を見れば驚くのではという予想を覆し、エニシさんは一度、瞬きをしただけで、目の前の事実を、ありのままに受けとめた。
器の大きい人だ。
清濁併せ呑むなんて
清を敬遠して汚濁こそが現実と、人と世界を貶め。
信じると口にしても口先だけで、自分の信じたいものしか信じない器の小ささを誤魔化して生きるのが、
「うん。<
それでも俺は、破滅が確定した未来ではないと伝わるように注意して、その言葉を口にした。
予言や預言といった呪いではないのだと解って貰わなければ、
妄信が美しいとするのも、また、それらの予知と同じく呪いなのだ。
予知は不完全なものと考えなければ、不安が事実だとしても──いや、だからこそ簡単に未来を忌まわしい不安な
そう、シュレディンガーの猫なんてオカルトじゃなく、双頭の鷲戦略という悪意の連鎖で。
預言により未来の可能性を切り捨て、たった一つの冴えたやり方を探すのは、
そしてそれは、和を以って尊しと考える
「……
それは、常々、周囲の村落の様子を見ていれば解る事だった。
幕府の権威が衰えて、純粋な農民を従えた半農の豪族が台頭したせいで、山間のこの
勝ち組に奪われた負け組みが生き延びるために更に弱い者から奪うという負の連鎖。
もともと、そういった暴力原理という仕組みで動いているのが、万民平等の平和を目指す<
「うん。いつかは──って、皆も思ってたことだよね」
だから、アテルイは力を求め、かつてのアメツチはそれが無駄と考え、一族の大人達は覚悟を決めていた。
「でも、<
自称現実主義者でなくても大言壮語としか思えない言葉だ。
くだらない台詞だと自称現実主義者なら嘲笑うだろう。
それでも
「それでオトナに成りたいのね。御霊の
エニシさんは、俺の
それでも嫌悪する様子も恐れる様子もなく問える。
俺の影響で変っても、
「御霊の
だから、
既に心を失った
客観的な感情の色を持たない俺の思いに、幼い
「
そして、エニシさんは、そんな
現代では悪用する人間が多いせいで、敬遠され、陳腐にすら想われ、果ては悪徳に溺れた快楽主義者から‘ 理念 ’と混同されて死や破壊を呼ぶと貶められてしまった現代の言葉でいうならば、二人の関係は‘ 理想 ’だった。
<和の民>ならば、あたりまえに感じ、信じて喜びの源としてきた関係だが、前世までの記憶を持ってしまった
前世の間違いを、この世界では犯さずに済んだ事が
それが、前世の俺の
この想いは、呪いを打ち払う祝い。
<死念>という呪いでもたらされた
<輪廻転生>という呪いを恐れ、人を信じられず英雄になる道を望んだ前世の俺の後悔の
前世の俺は、<輪廻転生>に呑みこまれ、<志念>システムの一部として統合されて、意志と想いの記憶のみになって逝った。
「ああ。だから、エニシさんさえ良ければ、最初に【
それを心の中で言祝ぎながら、
一番近しい繋がりが欲しいのだと。
「わたしに?」
「うん。俺の【
一番、何なのかは口にしなかったが、
「──わかりました」
エニシさんは、ふわりと優雅なしぐさで屈みこみ、
「それじゃあ、わたしは何をすればいい?」
そして、花がほころぶような笑みを浮かべて、どこか楽しげに問う。
子供の望む繋がりであっても、男が望んだ繋がりと判っているのだろうか?
幼い恋と憧れと母への思慕の混じった想いを知ってか知らずか、エニシさんは罪なまでに美しいという言葉が似合う
俺が
「えっと、あの、じゃあ──」
けれど、幼い
本当に罪な女だ────
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