人間に出来る事なんて限られてるんですけどっ!?
「問題を解決する時にしなくてはいけないのは、問題の正しい把握だったよな」
そのためには先ず目指す目標と、その障害となる問題点を整理する事だ。
目指す先だけど、絶対譲れない目標は、
物理的に一番簡単なのは、
<志念>には心を操る力もあるから、<志念>を覚えて一月もあれば一族の全てを手中にするのは容易いだろう。
でも、それでは意味がないって事だ。
けれど、そうなると詰んでいるとしか言い様が無い。
「天下布武とかより難しいぞ……朝廷も幕府も敵で商人との取引さえできないから、商人も敵に回るし……」
いくら<志念>があっても
前世までの知識はそう俺に教えてくれる。
近隣の
大陸勢力に与した朝廷を初め、
だから、武力で周囲からの圧力を跳ね返すのだと息巻いているアテルイ達少数派ですら、力をつけて周囲の
母親が妻が娘が許さないし、この時代の
前世を知るから俺もその選択肢を考慮できるが、
「俺ならできるんだ。滅びを回避できる。でも皆がそれを望まないなら……」
俺はどうすればいいのだろう?
逃げればいいのか?
逃げるとすれば行き先は北海道──ではなく蝦夷だ。
普通なら一族全員で動けば目をつけられて襲われるだろうが、<志念>があれば可能だろう。
けれど、それに皆をどう同意させればいい?
蝦夷で国を興すと説得するか?
いや、
山上一族と対峙した坂東の山中に一族が残っているのは、逃げられないからではなく、逃げずに最後まで<
前世の俺には、人には譲れない何かがあるとしか理解できないけれど、
俺はどうすればいい?
俺は、どうやって
しょせん、俺はただの負け組なのか……?
また、誰も何も護れずに勝ち組に踏みにじられるだけなのか?
俺?
俺って誰だよ?
不意に俺の中で
俺じゃなくて俺達だろ?
これは俺だけじゃなくて一族と<和の民>の問題じゃないか。
そう、俺に告げる。
「ああ、そうか……そうだったよな」
どうやら、俺は精神的な視野狭窄に陥っていたようだ。
背負うた子に教えられるという
63年分の俺より7年分の
能力も経験も関係ないのだ。
人が一人一人みんな違うのには意味があって、違うからこそ援け合う事で多くの未来を選択肢として見つけられる。
共存を目指せる人の個性と多様性を大切にする生き方。
それこそが<
<
そういう民主的で平等な共約だ。
勝ち組と負け組という争いの仕組みを世に持ち込ませないという<
「だったら、俺が護るんじゃなくて、俺達で護るんだよな」
困難である事は変りはないが、俺にできない事をできる信頼できて<
俺は、別に勝ち組になりたいわけじゃなかった。
勝ち組が
「だったら、
やっぱり、俺は
でも、しょせん俺なんかと、
それは、自分達の掟で優劣を決めるやつらの勝手な
相手を暴力で従える事を、勝ちと定めるような獣の
そう、人に信じさせようと
「そうだ。そんな
転生のどさくさで道に迷っていた大事な
<志念>なんてチート能力があっても、人間にできる事なんて限られている────そう、一人なら。
権力と権威で利権を造り上げ、利権のためだけに生きる人間ばかりが増えれば、人は未来を見失う。
前々世で、ソビエトが滅びたのは共産主義のせいではなく、そのせいだし、日本が格差社会を造り衰退していったのもそのせいだった。
何度生まれ変わっても、全てを忘れてしまわないのなら俺は俺なのだろう。
ならば、俺は俺らしく、俺だけにできることを見つけ、俺にできる事だけをやっていこう。
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