魔導学院編第6話再生魔導士
討伐から一夜が明け
古びた病院の一室
スノゥ「この度はご迷惑をおかけしました」
病院のベッドに身をおきながら
深々と頭を下げて謝罪するスノゥ
アリス「もぅ、何度も言ってるじゃない
こんな事は日常茶飯事だって
気にしてないから
その仰々しいの辞めてよね」
ザミエル「実際、こちらも
君が助けてくれなかったら危なかったしな
ところでこの後、どうするんだ?
昨日の商会に入りたいという話が
本気なら会長に話しは通しておくが」
2人はスノゥ程重傷ではなかったのか
普通に立っている
スノゥ「私にそんな資格あるんですかね」
スノゥは下を向き元気のない声で答える
アリス「あーもぅ!ウジウジしない!
やりたいか、やりたくないかでしょ!
はっきりしなさい!」
ザミエルが失笑する
アリス「な、なによ」
ザミエル「いや、おまえが会長に
似てきたなと思っただけだ」
アリス「冗談じゃないわ、こ、これは
い、一般論よ」
スノゥ「やりたいです、もっとお二人の側で
色々な経験を積みたいです!」
ザミエル「決まりだな、だが頑張るのは
まずは身体の状態を戻してからだ
医者が言うには1週間程で動けるようになると言っていた、ゆっくり療養しろ」
スノゥ「はい、わかりましたー」
ザミエル「さてと、じゃあ
俺は報告に行く、アリスも
大人しくしとけよ」
アリス「はいはい、わかりましたー」
病院を後にしたザミエルは
ギルド会館の通信機器で
事の経緯を商会に話した
スノゥの採用は一時的に認められ
本格的な雇用は追って通達するとの事
そしてルーベルク魔導学院への
出向を伝えられた
それから1週間後
アリス「ねぇルーベルク魔導学院って
何しにいくの?」
ザミエル「さぁな
古文書関係の預かりものをしてくる事
と、後は行けば分かる、だったからな」
アリス「てきとーね」
スノゥ「あはは、いつも
こんな感じなんですか?」
アリス「クリスタル絡み以外は
結構てきとーよね」
ザミエル「まぁ、そうだな」
アリス「よし、じゃあ行きますか!
ところでザミエル、どうやって行くの?
船?飛空艇?転送陣?」
ザミエル「ギルド会館から転送陣で
中央大陸側のギルド会館に行く
そこからはまた陸路だ
多分4〜5日で着くだろう」
アリス「えっ、転送陣使っていいの?
ラッキー!あれ高いのによく
許可されたわね」
ザミエル「まぁ、乙種討伐の
特別報酬も入ったし、任務には可能なら
早く着くよう言われていたからな」
ギルド会館へ到着し
転送陣を起動させる3人
次なる目的地、中央大陸の西側に位置する
港町ベルトーチカのギルド会館に転送される
スノゥ「わぁ、ここが中央大陸の
西の玄関口ベルトーチカですかぁ
初めて来ましたぁー」
アリス「ふふふ、ここは何といっても
魚が美味しいのよ(*´꒳`*)」
ザミエル「あ、ここは通るだけだからな
滞在しないからな、買い食い禁止、
早く行くぞ」
アリス「言うと思った( ´_ゝ`)」
ザミエル「今日中に東の山を
越えた先にあるローレンスに
着いておきたい」
アリス「はいはい( ´_ゝ`)」
スノゥ「何か理由があるんですかぁ?」
ザミエル「ひとつ、ベルトーチカは最近、
海賊絡みのいざこざが起きてて、夜は危険
馬鹿が喧嘩を吹っかけて揉め事になるから
ふたつ、このまま滞在したら
手持ちがある事をいいことに
金がなくなるまで食べ尽くす馬鹿がいるから
みっつ、山の中で野宿する事になると
機嫌の悪くなった馬鹿が
野盗に喧嘩を吹っかけて揉め事になるから
よっつ、ローレンスは名物が馬鈴薯だから
馬鹿が大量に食っても安くつく、
以上だ(真顔)」
スノゥ「納得しました」
アリス「納得するなー!
全部私の悪口じゃない!」
ザミエル「事実だ、さっさと行くぞ」
アリス「はぅ( ´△`)」
襟首を掴まれ、ズルズルとひきづられていく
一方、ルーベルク魔導学院の一室にて
通信機器で話す女性がいた
相手は会長のようだ
シド「〜ということで頼む、エルザ」
エルザ「えぇ、わかりました」
シド「重ねて、仕事を頼んですまないな」
エルザ「いえ、頼まれていた
古文書の解読は終わっていますし
今は学院の生徒さん達の指導だけですから」
シド「そういえば、ミレーヌは
南で頑張ってくれているよ」
エルザ「あの子は私より
優秀ですから」
シド「優秀な治癒術師はいくらいても
足りないのが現状だ、
学院での出向引き続き頼む」
エルザ「はぃ、わかりました、お師匠様」
再生術師エルザはルーベルク魔導学院へ
客員教授として出向し
日々生徒達の育成をしていた
元々孤児で行く宛のない身で
各地を転々としていたところを
治癒術師としての才能をシドに見初められ
ラグナ商会の顧問治癒術師をへて
現在に至る
数時間後
ローレンスに無事到着した3人は
宿屋で食事をしていた
アリス「わー馬鈴薯おいしいなー(棒読み)」
死んだ魚のような目で料理を食べるアリス
ザミエル「それは何よりだ、なんだったら
半年分も今の内に食って貯蓄しておけ」
アリス「半年分も食えるかぁo(`ω´ )o」
スノゥ「もぐもぐ、でも本当に
美味しいですよこれ」
アリス「誰も不味いなんて
言ってないじゃない
私は魚が食べたいけど(じと目)」
ザミエル「わかったわかった
ルーベルク魔導学院の件が終わったら
考えてやる」
スノゥ「あ、そういえばお二人って
ザミエルさんの方が偉いんですか?」
ザミエル「偉いというより、お守りだな」
アリス「誰がお守りよ」
ザミエル「ラグナ商会の人間は
ネーム有りとネーム無しに別れていて
ネーム有りの実戦部隊が大体2〜4人組で
世界各地に散っている事が多い
それぞれの能力や、性格、相性を考慮して
現場の采配が決められている感じだ
アリスの場合は誰も扱いきれなくて
仕方なく俺が組まされてるだけだけどな」
アリス「好きなように言ってなさいよ、
ふんっ」
スノゥ「じゃあ、ラグナ商会の人で
1番強い人って誰なんですか?」
スノゥは好奇心に満ちた目で
2人に問いかける
アリス「さぁ?直接戦う機会なんてないし
正直、化け物みたいなのがいっぱいいるから
誰が1番強いのか聞かれてもわかんないわ」
ザミエル「戦う条件や環境によっても
違うしな、それでも参考までにいうと
数百人いる商会のネーム有りの中で
俺とアリスは良くて真ん中ぐらいだ」
スノゥ「ふぇ〜お二人より強い人が
そんなにいてるんですかぁ」
ザミエル「まぁ、そういう事だな」
料理を済ませたアリス達が
それぞれの部屋に戻り、夜が老けていく
そして小鳥達が囀る朝を迎える
アリス「ふぁ〜眠い、Z z z」
ザミエル「お前最近、夜
よく出かけているだろう?
何してるか知らないが、程々にしろよ」
アリス「ルガルタで買ったコレ
試してたのよ」
そういうと、アリスの腕輪が
変形して大きくなり
直径30cmぐらいの輪ができる
そしてそれを
指にかけてくるくる回している
ザミエル「チャクラムか?」
アリス「うん、意外と使いやすいかも
実戦にはまだ使えないけどね」
そういうと空に向かってチャクラムを放ち
雷でコントロールする
ザミエル「で、いくらした?(真顔)」
アリス「3万ゴールド(・∀<)てへぺろ」
ザミエル「お前の交遊費から引いておく」
アリス「えー経費でいいじゃない
戦闘力の強化なんだから!」
ザミエル「経費で許される範囲を
超えている」
アリス「ち、ドケチめ」
スノゥ「皆さーん、お待たせしましたぁ
馬車の手配ができましたぁー」
束の間の日常を送る3人は
ルーベルク魔導学院に向けて
旅立つのであった
5日後
ザミエル「ふぅ、ようやく着いたな
予定より少し遅れたが、まぁ誤差の範囲か」
3人はルーベルク魔導学院の外門に到着した
アリス「ねぇ、あれって私の見間違えかな
向こうの方で、手を振ってる人
エルザに見えるんだけど」
ザミエル「そうだな、俺も見える」
スノゥ「お知り合いですか?」
アリス「まーね、私の姉弟子にして天敵よ」
渋々エルザの元に向かうアリス
エルザ「久しぶりねアリス、ザミエルも
そちらがスノゥちゃんでいいかしら?」
スノゥ「はい、はじめましてです」
ザミエル「お久しぶりです」
アリス「なんでエルザが
こんなところにいてるのよ」
エルザ「ここには古文書関係で
出向中だったんだけど
元患者がまた無茶ばかりやってるから
診てあげて欲しいって頼まれたのよ」
アリス「べ、べつに無茶はしてないわよ」
エルザ「隠しても全部知ってるんだからね
ふふふ」
不穏な空気が漂う中
スノゥが小声でザミエルに話しかける
スノゥ「どういった関係なんですか?」
ザミエル「あぁ、昔、
アリスの古傷の治療や戦闘後の治療も
彼女がやってくれていたんだが
アリスはあの性格だろ、人に優しくしたり
優しくされたりするのが苦手だから
度々無視して大怪我ばかり負って
エルザに叱られていたんだ、ヒソヒソ」
エルザ「立ち話もなんだから
学院に行きましょう
美味しい紅茶とクッキーも用意してあるの」
アリス「はぁ〜」
トボトボと、うなだれながら
アリスは付いていく
学院の一室
エルザ「〜で、これが
頼まれた古文書の解読法を記した
スクロールね
これを中央大陸のベルセルクにある
魔導図書館に納品して欲しいの
時期は指定されてないからゆっくりでも
大丈夫のはずよ」
アリス「こんなの転送したらいいだけじゃない?わざわざ私達が届ける必要あるの?」
エルザ「禁術に関する事だから
くれぐれも情報の漏洩は
避けないといけないのよ、
この解読法が悪用されたら
最悪戦争になりかねないの」
アリス「おっかないわねー」
ザミエル「承知しました
責任を持って任務にあたります」
エルザ「さてと、じゃあ後は
アリスと2人っきりにしてもらえるかしら」
ザミエルとスノゥが部屋を出ていく
アリスはエルザの横に立つと
視線を合わせないまま
両腕のドレスローブを脱ぎ
両腕をエルザに向けて突き出した
紫色に浅黒く変色し
何度も焼けただれたような
生々しい跡がある
エルザ「貴方、本当に変わらないわね
無茶ばかりやって、
せっかく治りかけてたのに」
アリス「だって仕方ないじゃない
やらなきゃ、やられる状況だって
ハンターやってたらそういう時もあるもん」
エルザ「私が言いたいのは
自分をもっと大切にして欲しいって意味よ」
アリス「そんな風に思えないもん」
エルザ「貴方、会長と一緒で
自分が嫌いなのね」
アリス「お説教より治療でしょ」
エルザ「これだけはもう一度言っておくわ
内部の損傷や火傷の跡は完治は無理でも
完治に近い状態にする事は
長い年月をかければ可能よ
でも貴方が自分を許してあげないかぎり
本当の意味で完治しないわ
忘れないでね」
アリス「・・・・」
エルザ「幸い、今回使ったっていう
禁術の影響は
少ないみたいね、こっちは直ぐに良くなるわ
問題は雷公鞭を使った方ね
再生治療の術式を付加しておくけど
こっちは2、3カ月はかかると思うわ
その間は無茶な使い方禁止ね」
アリス「・・・・コクン」
無言で頷くアリス
次回予告
第1章魔導学院編
第7話星天魔導士
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