始動編第2話次元の魔女

 夕刻、宿屋にて


 ドロシー「こんちゃーす!」


 開口1番元気な声が辺りに響き渡る


 ドロシー「あっザミザミがいる〜♪

 他の人は知らない人だね

 宜しくね、私がドロシーだよん♪」


 アイギス「アイギス、よろしく、です」


 ドロシーの後ろに隠れるように

立っていたアイギスは頰を紅く染め

片言の言葉を発する


 どうやら彼女は人づき合いが

苦手なようだ



 ザミエル「お久しぶりですドロシー様

 そしてはじめましてアイギス様

 今回の件を取り仕切る事になりました

 ザミエルといいます

兼ねてより千念導師の

 ご高名は伺っています

共に肩を揃えて闘える事を嬉しく思います」


 仰々しく挨拶をするザミエル


 アイギス「あ、あ、あ、あ、」


 さらに頰を紅くするアイギス

 ドロシーが割ってはいる


 ドロシー「にゃはは( ^∀^)

 ごめんねザミザミ、アイギスちゃん

 超人見知りだから」


 アリス「ねー紹介なんて

 どうでもいいから、早く行かない?」


 社交辞令が苦手なのか

 面倒くさそうにアリスは言う


 ザミエル「アリス!失礼だろ」


 ドロシー「あー君が噂の会長の

 秘蔵っ子ちゃんか、にゃはは

 聞いてるよー君の噂♪」


 アリス「噂?美人で可憐で強くて優しくて

 頼りになるって?(ドヤ顔)」


 ドロシー「ん〜ん、稽古つけたら

 涙と鼻水が2リットルぐらいでて

 汚かったとかあまりの空腹に

 調理したワライダケなら、

 食べれるって言って食べて

 笑い死にしそうになった事とかだね♪」


 アリス「あのジジー殺す!٩(๑`^´๑)۶」


 ドロシー「にゃはは♪

 ジジイは可哀想だよー」


 アリス「あいつ曰く、肉体年齢は34で

 止まって以来数えてないって言ってたから

 腐れかけのジジイで充分よ!」


 ザミエル「く、腐れかけ

 どうなっても知らないからな俺は」


 一同の雑談をシャンリオが

 冷静にいさめる


 シャンリオ「ぬしら、気を抜くのは

 ここまでじゃ、事は急を要す

 これ以上クリスタルを放置すれば

 より多くの犠牲が出る

 各々の役目を果たす事が第一じゃ」


 ドロシー「おっ、可愛いのに達観した事

 言う子だね〜坊やいくつ?」


 ドロシーは小柄な体躯のシャンリオを

 抱えあげ抱きしめる


 シャンリオ「ふにゅ( ´△`)ぼ⁉︎坊や

 わしは命蓮山みょうれんざん八卦仙人はっけせんにんが長

 シャンリオであるぞ!」


 アリス「あはははははは、坊やだって!」


 大丈夫なんだろうか、この人選で

 とザミエルが心の中で密かに思うのであった


 ──宿を後にし馬車にて

 廃炭鉱に向かう途中での事


 アイギス「さくせん?」


 ザミエル「そうですね

 目標は炭鉱の中にいるとの事ですので

 アイギス様には炭鉱の外に

 誘導お願いします」


 アイギスは無言で頷く


 ザミエル「クリスタルの覚醒状態は

 紫だということですが

 仮に黒になった場合は状況を見て

 対処するという事で

 白の場合は問答無用で撤退します」


 アリス「言われなくても白なんて

 ジジイぐらいしか対処できないから

 逃げるってば」


 この世界には高密度な魔力を蓄積する

 クリスタルというものがある


 クリスタルには意志が存在し

 人や幻獣の欲求を具現化、増幅、覚醒

 人外の兵器に進化させる現象が

 世界各地で起こっていた


 そしてその被害や自然発生する

 幻獣の討伐を執り行う機関が存在する

 人の手では抗う事のできない脅威を

 払うもの達をこう呼ぶ

 ギルドハンターと


 シャンリオ「ぬしら白の

 討伐経験はあるのか?」


 アリス「2回あるけど

 1回目は何もできず死にかけたし

 2回目はジジイに助けられただけだから

 参考にはならないわ

 あんなのの相手は二度とごめんだし」


 ドロシー「にゃはは♪

 わたしも白はなるべくこの人数だと

 相手にしたくない、てか死ぬかもね♪」


 アイギス「さじたりうす、つよかった、

 なかま、なんにんも、しんだ」


 アイギスが哀しみの表情を浮かべていた


シャンリオ「わしの力も限定的じゃからのぅ

 満月の夜ならば白でも相手にするのは

 やぶさかではないが、今は絶対無理じゃな」


 通常、覚醒したクリスタルは

 ギルドハンターの手練れが

 赤のクリスタルで10人〜

 紫で50人〜黒で100人〜

 白で500人〜

 に相当する戦力比があると言われている

 勿論、属性や相性、人や幻獣の状態による

 と言われているが

 基本的この指標が一つの目安となっている


 ザミエル「そろそろ着きそうですね」


 ザミエルの視線の先に

 今にも崩れ堕ちそうな

 炭鉱の入口が見えてくる


 アイギスがふいに何かを感じた瞬間

 無数にある炭鉱の入口から数種類の

 魔物が溢れ出すが、間髪いれずに

 全員が馬車から飛び出し敵の規模を測る


 シャンリオ「クリスタルにあてられたのか

 4日前より殺気だっておるわぃ」


 ザミエル「カプリコーンと相対する前に

 戦力を消耗するのは避けましょう」


 アリス「そんな悠長にやってたら

 白になっちゃうじゃない

 ここは一気に潰してやるわ!」


 ザミエルの制止を無視し

 アリスが詠唱を始めた


 魔術といってもこの世界に存在する

 魔術はいくつも存在する

 代表的なもので

 黒魔導、白魔導、そして召喚術


 アリス「血肉を贄に我、汝を求める、

 顕現せよ、破滅の黒鳥!アギト!」


 ドロシー「わーい、でっかい鳥だ(°▽°)♪」


 6mはあるであろう大きな翼を広げ

 咆哮を放ち魔物を威圧するアギト

 続けてアリスは命令を出す


 アリス「ぎ払え、廃退の息吹シャドウフレア


 アギトは勢いよく魔物の中央を掻き分け

 大空に飛翔し、その口内から

 高温の息吹きを吐き出した


 辺りは一瞬にして魔物の骨さえ残らない

 焦土と化した


 ドロシー「召喚術も使えるなんて

 流石秘蔵っ子ちゃんだね♪」


 アリス「…………正確に言えば

 これは私の力じゃないわ、姉さんの形見よ」


 少し寂しそうな目をしたアリスが

 アギトを見つめる


 シャンリオ「露払いは済んだが

 気を抜くでないぞ、本番はここからじゃ」


 一同は無言で頷くとそれに続いて

 先刻までとは様子が違ったアイギスが

 先頭に立ち、流暢りゅうちょうに詠唱を始めた


 アイギス

「大罪の徒、万有引力のくさびをもって

 今ここに」


 巨大地震でも発生したかのような

 錯覚を覚える鳴動を一同は感じた


 アイギス「超念導破砕陣サイコクライシス!」


 廃炭鉱が山ごと、もの凄い轟音と共に

 裂けていく


 ドロシー「おおー相変わらず

 アイギスちゃん派手だね〜♪」


 アイギス「見つけました

 前方距離450m先!」



 崩れおちる岩の先から

 不気味に紫に光る

 山羊の形をかたどった

 クリスタルが姿を現した


 攻撃されたせいか

 敵意を剥き出しにして一向を威嚇する


 シャンリオ「むぅ、いかんのぅ、

 さらに魔力が濃くなっとる」


 アリス「ふんっ、獣の分際で生意気よ!

 あたしがやるからあんた達は見てなさい!」


 そう言い放つとアリスは

 カプリコーンに

 向かい一目散に駆けだした


 ザミエル「ちっ、あの馬鹿」


 アリスと会敵する間際

 カプリコーンは魔法陣を展開する


 カプリコーン「地の神の怒りグランドダッシャー


 地面が裂け無数の岩でできた

 槍がアリスを襲う


 アリス「あっぶないわね〜」


 紙一重で躱し後退するアリス


 ザミエル「一人で行くな馬鹿、あれは

 お前とは相性が悪い、何でドロシー様が

 来てるか考えろ」


 アリス「わ〜かったわよ〜」


 カプリコーン「聖石を狩る者よ、

 汝らの苦痛も我が食ろうてやろうぞ」


 アリス「はっ!やれるもんなら

 やってみなさいよ!」


 カプリコーンの周りが歪み始め

 数百体の悪魔が召喚される


 シャンリオ「アークデーモンは

 わしらが何とかする

 ドロシーとアリスは

 カプリコーンを叩け、よいな」


 ドロシー「にゃはは♪出番だねん(°▽°)」


 箒に跨り空に上がっていくドロシー


 ザミエル「アリス、カプリコーンは

 土の加護を得ている、雷の類いは

 効きにくい、わかってるだろうな」


 アリス「わかってるってば!」


 不機嫌そうに返答するアリス


 召喚された悪魔達が襲いかかってくる


 シャンリオ「愚か者め!我が拳で

 光りとなるがよい!」


 か弱い体躯とは裏腹に襲いくる悪魔達を

 その光り輝く拳で

 次々と千切っていくシャンリオ


 ザミエルもマスケット銃を構え

 正確に悪魔達を撃ち貫いていくが

 倒されたはずの悪魔達が再生し始めた


 ザミエル「面倒な」


 アイギス「本体を破壊しない限り

 無意味なようですね」


 冷静な口調で襲いかかってくる悪魔達を

 念導力で弾き飛ばしてアイギスは言う


 シャンリオ「みたいじゃのぅ

 消し飛ばしても、再生しよる」


 シャンリオ達が苦戦してる一方

 距離をとりながら戦っていたアリス


 アリス「うっざいわね、あの土の障壁!」


 ドロシー「にゃはは♪

 魔力もうすぐたまるよ〜ん」


 遥か上空から緊張感のない声を

 かけてくるドロシー


 アリス「あんた、私ばっか戦わせてないで

 自分でも戦いなさいよー!」


 ドロシー「よくよく考えたら

 その障壁があると多分ここら一帯

 吹き飛ばすぐらいの魔法になるけど

 大丈夫かな〜?( ´_ゝ`)ホジホジ

 障壁なんとかしてくれたら

 エコなのにするけど〜」


 より一層激しさを増す

 カプリコーンの岩の槍を

 必死にかわしながら


 アリス「わーかったわよ!

 障壁さえ何とかすればいいのね!」


 ドロシー「頑張ってねーん♪」


 渋々覚悟を決めたアリスが

 カプリコーンに向かって吠える


 アリス「いくら耐性があっても

 限度ってものがあるのよ!」


 アリスは腰に下げていた杖を取り出して

 構えると詠唱を始めた


「我が道を阻むもの、灰燼かいじんとかせ、

 高周振動型雷神剣テスラブレイド!」


 自身の3倍近くある赤紫色に輝く刃を

 杖の先に精製した


 アリス「はぁーうりぁぁぁぁ!!」


 激しく障壁とぶつかり合い

 一進一退の攻防が繰り広げられる


 アリス「ぐぬぬぬぬ、砕けろー!」


 精製した刃にさらに魔力を込め

 アリスは渾身の一撃を振るう

 その瞬間、障壁に亀裂が走り、崩壊していく



 アリス「後は任せたわよー」


 不満そうに空を見上げながら言う


 ドロシー「にゃはは♪いっくよー!

 重力の渦、逆転するが如く」


 大空を自由に旋回していたドロシーが

 正面にカプリコーンを捉える


 ドロシー「超重力衝撃砲グラビトロンカノン!発射!」


 箒の先に圧縮されたエネルギー体が

 カプリコーンに向かい放たれる


 アリス「え!ちょ!」


 巻き添えを喰らいそうになるが

 辛うじて退避するアリス


 カプリコーンに直撃した球体の

 エネルギーは周囲の空間を歪め

 衝撃と共に全てを消し飛ばす


 しばらくすると

 辺りが衝撃と風圧から解放された


 ドロシー「お仕事完了!(°▽°)」


 アリス「完了!じゃないわよ!

 私まで塵になる所だったわよ!

 あれのどこがエコなのよ!」


 ドロシー「まぁまぁ、何とかなったから

 良かった良かった(°▽°)」


 アリス「ジジイの知り合いって

 こんな奴ばっかじゃないの!怒」


 仲良く喧嘩?している姿を

 遠目に見ていたシャンリオ達が

 二人の無事を確認すると


 シャンリオ「ふぅーどうやら今回は

 何事もなく終わったようじゃな」


 ザミエル「ええ、媒介が見当たらない所を

 見ると、途中で自壊したようですね

 未完成体で助かりましたよ」


 アイギス「おなかへった」


 夕陽が沈む、かたわれどき

 廃坑跡地を後にする一行

 アリスの物語が始まるのであった


 次回予告

 第1章回想編

 第3話「青魔導師」
















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