Qualia Quest ─雷の章─

片翼のクシャトリア

始動編第1話雷撃術師

 この世界は

 人間達が暮らす地上界

 天使や神々が暮らす天上界

 魔族や魔神が暮らす魔神界

 妖怪や独自の文化を持つ人類が住む妖夢界

 知性の高い幻獣や精霊が住む幻獣界

 生体を機械化した人類や機械が住む機人界


 6つに分かれている


 これは地上界での1人の少女アリスのお話


 物語はとある街から始まる


「あ〜あ何で私がこんな大陸の端っこの

田舎町まで来ないといけないのよ」


 不機嫌そうな顔を浮かべ銀髪の少女は

 連れの男に悪態をつく


 男「ボヤくな、文句は会長に言え」


 目鼻立ちの整った金髪の青年は一蹴する


「でもさー ザミエル

 こんな何処にクリスタルなんて

 あるのか疑問なんですけどー」


 ザミエル「あくまで発見するのが目的だ

 協力者と一緒にな」


 アリス「協力者って今回誰なの?」


 ザミエル「……確か、霊帝が

 先に来てるはずだ」


 アリス「うげぇー! あいつか」


 ザミエル「文句は本調子に

 戻ってからにしろ

 まだ、先の戦いの禁術の影響で

 ろくに右腕が動かないのを会長が

 気を利かせて偵察にしたんだろうしな」


 アリス「大丈夫大丈夫!!

 オメガエリクシールで治ったよ

 ……4割ぐらい」


 ザミエル「……オメガエリクシールは

 大量に買えるポーションじゃないんだ

 売れば城が建つぐらいの

 値段なんだから自覚しろ」


 アリス「げっ ! あの糞不味い液体が

 そんなにするの!!」


 ザミエル「世界7大秘薬の一つだからな、

会長もよく自業自得のやつに使ったもんだ」


 アリス「ま、 それのおかげで

街も救えたし結果的に良かったんじゃない」


 二人が小話をしながらいるここは

 大陸図では西の外れに位置する

 鉱物資源が豊富とされる

 鉱脈と大渓谷が並ぶ地方オズベルト


 二人はその田舎町ルガルタにいる


 アリス「やーーーっと着いた!!

 とりあえずギルドで情報集めるの?」


 ザミエル「いや、先に合流する、

 確か宿屋で待機してるはずだ」


 アリス「宿屋、宿屋、

 あっ あそこじゃない?」


 二人が宿屋に入ると横から声が刺さる


 シャンリオ「やっと来たか、

 丁度退屈しとったとこじゃあ

 なんじゃあ半端者とおまえさんの

 2人だけか?」


 宿屋の長椅子に腰掛け、書物を読みふける

 少年が声をかけてきた


 アリス「誰が半端者よ糞チビ助

 私の力どれだけ上がったか見てみる?」


 シャンリオ「力だけで強くなったと

 勘違いしとるうちはその残念な胸と一緒で

 成長しとらんと言っとるんじゃ」


 アリス「あんですってぇ〜!」


 ザミエル「アリス少し黙れ、それで霊帝、

 目標は見つかりましたか?」


 少女を揶揄からかい微笑していた表情が曇る


 シャンリオ「それがの〜どうやら今回は

 当たりのようじゃあ」


 アリス・ザミエル「……」


 一瞬にして空気が凍りついたが

 少年の言葉が続いた


 シャンリオ「3日前にお前さんとこの

 会長に連絡しといたんじゃが

 別で応援二人よこすと言っておったのー」


 ザミエル「誰が来るか聞いていますか?」


 シャンリオ「さてのー、ただ あっちは

 あっちで厄介な事になっとるみたいだのー

 主戦力は送れんから

 外部で頼むといっとったぞ、

 相手の戦力を見極めて無理なら

 すぐに撤退しろと釘を刺されたのぅ」


 ザミエル「応援の到着はいつですか?」


 シャンリオ

「今日の夜になると言っとった

……確かドロシーとアイギスとかいう

名じゃったかの」


 アリス「ドロシーとアイギス⁉︎それって

 次元の魔女と千念導師じゃないの?」


 シャンリオ「知っとるのか?

 どうも魔導師の世俗に疎くてのー

 そやつら強いのか?」


 ザミエル「お二方とも高名な魔導師ですよ

 特にドロシー様は会長に

 匹敵する魔力の持ち主だとか」


 シャンリオ「それは頼もしいのぅ、

 わしも今は霊獣が出せんからのぅ」


 アリス「あんた、あれ出せなかったら

 役立たずじゃん、どうすんの?」


 シャンリオ「5分の力でも

 半端者よりは闘えるでのぅ」


 アリス「っさいわね」


 ザミエル「実質4人の戦力で挑むのは

 危険がありますが、霊帝、相手は?」


 シャンリオ「恐らくカプリコーンの

 クリスタルだと思うのぅ

 ただいつになっても

 おかしくないぐらいの魔力を

 発しておったわ」


 ザミエル「相対されたんですか?」


 シャンリオ「うむ、斥候せっこうがてら

 4日前にのぅ、ここからさらに

 西に行った廃炭鉱の中じゃ

 流石に地の利が悪く、1人だと痛み分けが

 限界じゃったがの」


 アリス「炭鉱の中だと

 魔術使えないじゃない

 なんだか面倒そうね」


 シャンリオ「そういう事じゃのぅ、

 ともかくお前さん達も応援組が来るまで

 待機じゃな」


 アリス「じゃあ私は町の中でも観て来るわ、どうせ何もないでしょうけどただ座って

 待つのも退屈だから」


 ザミエル「好きにしたらいい、

 夕刻には戻れよ」


 そうザミエルがあしらうと

 アリスは宿屋から出て行った


 シャンリオ「やれやれ、

 相変わらず騒がしいのぅ

 それはそうと実際問題どうするんじゃ?

 その次元の魔女とやらが

 いかに強大な魔力を持っていたとしても

 それを使えない場所じゃぞ」


 ザミエル「多分それを見越しての

 千念導師様の起用でしょうから

 問題ないでしょう

 流石は会長ということですかね」


 不敵に笑みを浮かべるザミエルと

 霊帝が話しをしている同時刻

 オズベルトの東国境付近の大草原を1台の

 馬車が駆けていた


 ドロシー「この調子なら夕方までには

 間に合いそうだね、アイギスちゃん」


 アイギス「だれ、いる、かな」


 ドロシー「そうだね、誰がいるか

 楽しみだね、にゃはは」


 少し大きめの黒帽子と黒衣を纏い

 屈託のない笑顔と八重歯が

 印象的な白髪の少女ドロシー


 長い黒髪に西洋人形のようなドレスと

 単語のみの言葉使い

 紫色の瞳を持つ少女アイギス

 この二人が次元の魔女と千念導師と

 呼ばれる魔導師である


 アイギス「どろしーしごとひさしぶり」


 ドロシー「そだね、アイギスちゃんと二人でお仕事するの久しぶりだね」


 アイギス「まだ、つかない?」


 ドロシー

「後4時間ぐらいでルガルタかな」


雲ひとつない晴天を見上げるドロシー

馬車はひたすら目的地に向かって駆けていく


 ── 宿屋を後にしたアリスは町の

  魔導ショップに来ていた


 アリス「へぇ田舎の割に良いものが

あるじゃない、この雷の魔石なんて

王都で買ったら倍はするんじゃないの?」


 店主「最近雷の魔石が大量に出土してね、

 価格が一気に下がってきたんだよ、

 今買うのがオススメだよお嬢さん」


 アリス「大丈夫、魔石なんてなくても

 私は雷撃得意だもん」


 店主「ほーお嬢さん、君魔導師かぃ?

 だったらこのチャクラムなんて

 どうだろう?」


 アリス「チャクラム?

 この輪っかみたいな武器?」


 店主「これは雷の属性と相性がいい魔石で

 仕上げてるから操作性も威力も

 折り紙つきだよ

 普段は腕輪にしておけるし携帯に便利」


 アリス「ふ〜ん、じゃあそれ買うから

 ハイエーテル3本オマケしてくれる?」


 店主「参ったな商売上手だねお嬢さん、

 いいよハイエーテル3本オマケで

 3万Gだ」


 アリス「やったぁありがとおじさん」


 店主「しかしこの時期に魔導師さんが

 こんな田舎町に来るなんて珍しいね

 何かあったのかぃ?」


 アリス「うーーん、ちょっとね」


 店主「最近西の方で良くない噂を聞くから

 お嬢さんも近付かない方がいいよ」


 アリス「大丈夫よ、私はアリス

 これでもハンターなんだから」


 そういいながら店から立ち去るアリス


 店主「ん?アリス?はて?

 どこかで聞いた気が」


 店を出たアリスが通りを歩いていると

 一軒の家に人だかりが出来ている

 どうやらお通夜のようだ


 町人A「西に探索にでて犠牲となった者は

 これで8人目か」

 町人B「デュランの奴、幼い娘さん一人

 残していっちまいやがって」

 町人A「娘さんは施設に送られるだろう

 あの年で不憫な事じゃ」


 町人達が話しをしているのを

 横目にアリスは視界に入った娘に

 向かって小さく呟く


 アリス

「不幸なのはあんただけじゃあない」


 肘まであるドレスグローブを見つめ、

 一瞬目を伏せ何かを思い出していたが

 アリスは再び歩き始めた


 ──8年前、とある研究所にて


 研究員「所長、これ以上の負荷は被験体の

 生命維持に問題が出ます!

 即刻中止して下さい!」


 宝条「君はなにか勘違いをしてるね、あれは人ではないのだよ、あれは到達点を目指す為の部品、そう部品でしかないのだよ」


 宝条は不気味に微笑む

 ガラス越しの先にはいくつのもコードを

 繋がれた血だらけの少女がいた


 宝条「私は暫く第4研究所に行かなくてはならない、君も下手な同情心で家族を危険に晒したくなければ大人しく研究を続ける事だ」

 研究員「・・・・」

 宝条「そぅ、それでいいのだよ」


 ──翌日


 研究員「すまんな、許してくれ、これも家族の為なんだ」


 少女「か・・・ぞ・・く、・・・リ・・・ス・・ね・ぃ・・ゃ・・ん」

 消え去りそうな声で少女は口を開く


 警報「第三ブロックに侵入者あり、第三ブロックに侵入者あり、至急警備システムを起動します、各員は速やかに退避して下さい」


 研究員「侵入者?外のセキュリティは

 どうなっているんだ」


 男がそう叫んだ瞬間

施設に爆音がこだまする


 研究員「くっ、なんだ、何が起こったんだ、せめてサンプルだけでも外に」


 そう言って少女の手を引こうとした刹那

 背後から声がかかる


 謎の男「人が人の身を超えるのに

 人を犠牲にするのか

 あの男はまだそんな事をしているのか」


 研究員「だ、誰だ!」


 研究員が声を荒げたと同時に男は

 研究員を切り捨てる


 少女「あぅ・・あ・・・ぅ」


 謎の男「おい、生きてるか?ガキ」


 虚ろな瞳をした少女に男は

 そう問いかけ手をかけようとした


 少女「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 少女の全身から稲妻がほとばしり男を拒絶する


 謎の男「落ち着け」


 男が稲妻に打たれながらも少女の両肩に

 手をかけ抱き寄せ、背中を摩るように

 なだめると少女は意識を失った


部屋には男の仲間らしき人物が集まってきた


「会長大丈夫ですか?」


 謎の男「あぁ、見つかったか?」


「いえ、どうやら察知して

 逃げられたようですね」


「その娘、どうします?」


謎の男「手当を頼む、その後は本人次第だ」


 男は研究室に散らばっている

資料を見つける


 謎の男「薬物、拷問による生体機能の

人為的な進化を促す、強化人間の類いか」



 不快そうな表情を浮かべた男は

 崩れ落ちる施設を後にした



 次回予告第2話

 次元の魔女



















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