第11話
コンサートは昼過ぎに始まった.
淀川くんは自分の勉強用の椅子に座りながら確かめるように軽くギターを弾いた後、「いくよ」といってギターをかき鳴らし始めた。
乾いた、喉をからすような声だ。
俺はここにいるぜって叫んでいるような、声だ。
わたしは体育座りで淀川くんの声を聴いていたが、やがて指で床をトントンとしてリズムをとるようになった。
恋の歌。甘酸っぱいわけではなくて、氷砂糖みたいな甘さでもなくて。
どう表現したらいいのかな。
アウトロの余韻の中、ほんとはいけないんだろうけど、淀川くんに話しかける。
「すごいね」
「ほんと?」
「すごいよ」
「どんなところが?」
「言葉じゃ伝えられないよ」
「そうかなぁ」
淀川くんは顔を真っ赤にして、目を合わそうとしない。自分を曝け出してしまった恥ずかしさとか、緊張からの解放からだろうか。
「だってさ」
わたしは淀川くんを見上げる。
「言葉じゃ伝えられないから歌にしたんでしょ」
淀川くんがこっちをみた。
目をそらさなかった。
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