第6話
「時をかける少女」をみて、感動した。
どこがどうよかったなんて、説明はできないけど夜は興奮して眠れなかった。
翌日の朝、好きなバンドの曲を聴きながら、ふとわたしも、人を感動させてみたいという気持ちが芽生えた。
北上ちゃんと話がしたい。話したいことがいっぱいで、記憶から漏れてしまいそう。
もう二週間も席は空いたままだった。
「え、えと、北上…さんは、どうしたの…ですか」
「なんで、……僕に聞くの」
「なんで……って言われても」
席が隣だったから。気弱そうだったから。英語のペアワークで時間が余ったから。
ろくな理由が浮かんでこない。
「りゆうはないです」
「うん、北上さんは……多分不登校だよ」
「不登校……」
まるで考えたことのなかった答えだった。意識の外に放り出されていた言葉だった。勉強熱心で、優しくて、先生からも好かれていたのに。
あの、廊下を走り去る姿が、なんだかすごく哀しく思えた。
夏休みは8月に入ると、時間の流れが速くなる。
わたしは昨日の夢を思い出す。北上ちゃんに無理やり、しらすを口に突っ込まれる夢。生臭いしらすの味が起きても口の中に残っていた。
でも、なんでしらすなんだろうな。別にきらいでもないのに。
不登校をどうにかしようなんて気持ちは出てこなかった。どうしようもない。彼女のこころのうちなんて、わかりっこなかった。
「嫌なやつだなぁ」
独り言にしては大きい声で自分に対して呟く。
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