第5話
息が詰まりそう。なんでこんなことをしているのか、全く意味がわからない。
必死にもがくけど、一向に進まなくて、体力は失われていくばかり。
うっすらと青い壁が見えた。
あとすこし、あとすこし……
やった。
やっと泳ぎから解放されて、水面から顔を出す。
「2分台に収まったよ」
「やった……」
「……雨森さんって、息継ぎしないんだね」
「息継ぎしたら、足ついちゃうから」
つまり、泳げない。
わたしはタイムを計ってくれていた子からストップウォッチを受け取って、タイムを記録係に報告する。
吐きそう。
次に泳ぐ人のタイムを計るためにストップウォッチを持ったまま、プールサイドに座る。
まだ頭がくらくらする。水泳なんて早く終わってほしい。
笛の音がした。一斉に泳ぎ出す泳者たち。
すごいなぁ、陸上生物のくせに、泳ぎがうまいなんて。
25メートル地点に着いた時、気づいた。
タイム計ってない。どうしよう。ああ、またやっちゃった。
あと75メートルか。怒られるまで。
本当に、早く終わってほしいけど、時間は過ぎてほしくない。
7月は、楽しい月だ。……水泳を除いて。
窓から見える景色も、ジメジメとした暗さから脱して、明るさを取り戻してくれた。あとは夏休みにまっしぐらだ。
北上ちゃんは今日も休んでいる。テストが終わってからずっとだ。持病のぜんそくが悪化したのだろうか。
技術の時間中、眠気に襲われ、必死に抵抗していたがやがてわたしのおでこは机に吸い込まれた。
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