第4話

部活がなくなって、テストが近づいていることを実感する。

中学三年間の内申点は、受験にも関わってくる大事なものだけど、ぼんやりと授業中に妄想の世界に浸る癖は、どうしたってなおりそうもない。

寝てるやつよりはましだと、思ってみる。

北上ちゃんは休み時間を勉強時間に変えた。まだ、中学二年生なのに受験生より勉強しているんじゃないかな。

北上ちゃんがわたしの机に来なくなってから、わたしは休み時間を妄想の時間にすることにした。恐れていたコバエの襲来は、去年ほどひどくはないけど、時たま、ちょんと机の上に乗ってきて、イライラする。

6月は嫌いだ。祝日もないし。


毎度のことだけど、わたしは数学という教科にいつも悩まされる。

意味のわからない発展問題に頭を抱えながら、古代インド人と、ギリシャかどっかの偉人達を罵倒していると、テストが終わった。

クラスのみんなの、テストの答えを確認しあう会話を聞くまいと、耳をふさぐ。リュックをつかんで教室から出た。


散々な結果に終わった合唱発表会だったけれど、担任の先生は大成功だと言った。

わたしは、じゃあどういう場合が失敗かと考えた。生徒全員がボイコットしたら、不良がピアノをバットで叩き割ったりしたらだろうか。リーダー格の女の子はいつまでも難しい顔をしていたけど、クラスの大半は期末テストが迫ってくることに気がついて、合唱は頭の片隅に追い込まれていた。廊下を歩いてる間に、合唱のことを思い出していたわたしに、北上ちゃんが軽くぶつかって来た。

「テスト、どうだった?」

「やだ、思い出したくないっ」

わたしはまた耳をふさいでみる。北上ちゃんがにひひと笑う。

「合唱、残念だったよね」

階段を降りながら、そう呟く。

「何を、今更」

「自省は重要だよ」

「反省することなんてないよ、なるべくしてああなった」

「そうかな」

「うん、未来をみなくちゃ」

なんだか、安っぽい格言みたいなことを言うな。

「じゃね」

彼女はいつものように走って帰っていった。

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