戦闘訓練と事前準備(戦闘スタイル等の描写)
競技場の周辺には、試合に先立って戦闘訓練を行うことができる施設がいくつか準備されていた。アイはそのうちのひとつで、自分の技や状態の最終確認を行っていた。
高レベルの剣士の動きをトレースして再現する人形が振るってくる訓練用の木刀を左手にかまえたシルバーの
背後から襲ってきた人形をかわしざまに、ナイフをしまいながら異空間収納から取り出したフォークを三本、右手の指の間に挟んで投擲。正確に人形の
続けて三体の人形が三方向から同時にかかってきたのに対しては、異空間収納へ
「メイディアン・ジャベリン!」
少し離れたところに弓を構えた人形が現れたのを見て、即座にモップを投げつけると、人形は弓を放つ間もなく頭部を砕かれて倒れ伏す。
と、今度は反対方向にライフル状の銃を立て膝で構えた人形が現れ、弾を撃ってくる。
「メイドスラッガー!」
サイドスローで放たれたメイドカチューシャは、回転しながら赤く発熱し、超音速で飛来した弾丸をすべて叩き落とすと、そのまま飛翔して銃を構えていた人形の首を落とし、旋回してアイの手元へ戻ってくる。
そこへ今度は上空から巨大な翼竜の模型が急降下してきて、鋭いくちばしでアイを突こうとする。
「ファイアボール!」
目の前に降りてきた翼竜の模型目がけてアイの手から放たれた火炎魔法が、頭部を直撃して火だるまにする。地面に落ちた翼竜の模型は、そのまま黒焦げになって動きを止める。
すると、今度は人形ではなく機銃とミサイルランチャーを車体上部に搭載した装甲車が訓練場端のゲートから走り出してくる。
「メイディアン・シューツ!」
そう叫びながらアイが右足を後ろに振り上げてから思い切り前方へ蹴り出すと、右足の黒いローヒールパンプスが装甲車目がけて飛んでいく。スカートがまくれてスコートが見えるのも気にせずに、左足のパンプスも同様に蹴り飛ばす。すると、飛んでいった左右のパンプスが空中で合体し、キリモミ状に飛行しながら装甲車に向かって飛んでいく。そして迎撃の機銃掃射をものともせずに、そのまま装甲車の正面装甲を貫通して後部まで一気に突き抜ける。
爆発炎上する装甲車を背景に飛び戻ってきたパンプスが再び左右に分かれ、順に差し出された右足、左足にそのままスポッとかぶさっていく。
一応の戦闘訓練は終わったのか、その装甲車を最後に訓練用の標的は出てこなくなった。
フゥ、と溜息をついたアイは、さっき投げっぱなしにしていたフォークやモップを拾って回収して異空間収納にしまうと、一冊の冊子を取り出し、パラパラとめくりながらつぶやく。
「一通りの訓練はしましたが……こうした普通の技は通じそうもない方も多いですね。
トーナメント参加者のプロフィール冊子を見るだけでも、とんでもない能力の持ち主ばかりである。その一方で、戦意を抱くことができそうもない、ただの猫や、平和の使いの鳩や、五歳くらいの女の子などもいる。
「この大会は、最強の
探偵のプロフィールを見ながら、自分の思考をまとめるように、口に出して確認するアイ。
「ベストを尽くす必要があります。戦闘以外の要素に対応する準備もしておかねばなりませんね」
そう言うと、異空間収納から猫缶や猫の固まる砂、鳥の餌、小学校受験用問題集、日曜朝八時半の幼女向けアニメ(※なぜかターゲット層に十九~三十代男性も含まれるとする説あり)のキャラクターグッズ、和菓子の名店のどら焼きなどを取り出し、使い方や賞味期限などを確認する。
「これだけでは足りません。能力的にはどうしても敵わないような相手には、
覚悟を決めるように言うと、目を閉じて技の名を口にする。
「メイド流観察術『
それは、いかなる秘密であろうとも、過去にあったことはすべてを見通してしまう禁断の秘技。
アイは、すべての参加者の過去を見通し、勝つための方法を探りはじめるのだった。
※勝てなそうもないような参加者が多いので「メイドらしい
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