#2
「千晶ー!部活いっくぞー!!」
「暑いのに元気ね…あなたは」
「あったりまえだろー!!」
千晶と同じ写真部である由比。彼女はいつも騒がしい存在だ。
「今日も暑い…」
「うはー!あちーなー!!」
「……テンションを人に強要させないところ、好きよ」
「どーも!!」
「こんちわっすー!!」
「こんにちは」
「夏美先輩、千晶先輩こんにちは!」
「あ〜!夏美先輩、ちょうど良いところに!
これみてもらっても良いですか?」
「んー、どれどれー?」
写真部のイメージとはかけ離れている由比だが、実は部活の中で一番成績が良く、人当たりも良い。
そのため、後輩にはとても頼りにされている。
「なんて言うんですかね〜、なんかこうインパクトをババーン!と出したいんですよ」
「なるほどね!そうしたらここをさー。」
「ふむふむ、なるほど!」
今日も後輩の乃莉は熱心だ。
毎回といっていい程、夏美にアドバイスを貰っている。
「千晶先輩、もうすぐコンテストですよね」
もう一人の後輩、幸は千晶によく話しかけてくる。
「そうね。締め切りまであと10日…」
「先輩はもう撮りましたか?コンテスト用の写真。」
「いいえ、まだよ。そろそろ撮らないといけないわね」
「ふふっ、千晶先輩は夏美先輩と正反対ですよね」
「え?あぁ…夏美は明るいものね」
「いえ。その事じゃなくて…千晶先輩は写真を撮るのは好きだけど、コンテストはあまり好きじゃないですよね」
「そうね。自分が写真を撮りたい時に撮る。撮りたいものを撮る。…その方が自由でいいじゃない。」
「確かに、コンテストだと大体テーマがありますよね。」
「コンテストは更に期限がある。
…私はもっと気楽に、写真を趣味として
楽しみたいのよ」
「それは素敵ですね。夏美先輩と乃莉は、コンテストを楽しみにしてるみたいですよ」
「まぁ、一目瞭然よね…夏美にいたってはコンテストのために入部した様なものだし」
「乃莉は完全に夏美先輩の影響ですね。あの子ってば真っ直ぐというか…」
「そうね。……幸さんは?」
「私は、コンテストがあればコンテストに向けて頑張ります。無ければ無いで個人で楽しみますかね」
「なるほどね…幸さんは柔軟性があっていいわね」
「そうですかね。」
「なになに?!なんの話ですか〜?」
「部活の価値観について…?かしら。」
「えぇ〜!何か、すごそうっ!」
「なんか壮大な話してたんだなー!!」
(この二人…テンションが似てきた…)
千晶と幸は密かにそう思った。
『た………そ…だな』
「えっ…」
またあの声?!
思わず瞳孔が開いた。
「千晶ー?」
「先輩?」
「千晶先輩、どうかしましたか?」
重なる部員の声が耳に入り、さっきの声をはっきりと思い出せなくなった。
「さっきも…こんな事」
「へ?千晶?」
「…いや、何でもないわ。」
「大丈夫ですか?調子悪い感じですか?」
「そうなのかしらね…」
「今日は早退しますか?」
「大丈夫よ」
心が…落ち着かないわ…
千晶は胸の奥にひっかかるものを感じた。
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