第6話 青い水

 夢を見た。


 小さな手漕ぎの舟に乗っている。


 どうやら洞窟の中らしい。真っ暗ではない。舟が浮かんでいる水が光って、辺りを照らしている。


 水の色はまさに「青」そのもの。アズライトの、ラピスラズリの、ありとあらゆる青が合わさり、青の王たるにふさわしい「青」になっていた。


 舟にはもう一人乗っている。

 

 自分の前には女性が座っていた。袖の長いドレスを着ていて、それはこの水と同じ「青」のドレスだった。


 自分は舟を漕いでいるのだが、ちっとも進まない。確かに櫓は水をかいているのだが、舟は進みもしなければ同じ場所を回りっぱなし、なんてことすらない。ただその場に留まり続けるだけであった。


 恥ずかしくなって思いっきり漕ぐのだが、やはり舟は動かない。


 女性を見ると、こちらに向かってにこやかに微笑みかけている。そうされると余計に焦る。


「動かないようですね」


 女性が話しかける。


 いや、絶対動きます、と自分が言うと、


「いいじゃありませんか。動かないのなら、それで」


 と言って、また微笑みかけた。


 自分は、それもそうだと思って漕ぐのをやめた。


 水はますます青く、そして発せられる青の光も強くなり、辺りは青一色に包まれていった。

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