第3話
戦線からかなりの間走ってようやくコウガは一息ついた。
「ふー...まったくinitialGとか聞いてねぇぞ...。年食って大抵はそういうこともあるで済むようになったが...そんなことはなさそうだなぁこりゃ。今の時代この年でもまだ若造ってことかね」
そうつぶやくコウガは今年で41になった。この時代サイボーク技術で50代だろうが60代だろうが10~20代の若者と変わりない運動能力を手に入れることも可能だ。当然それには莫大な資金が必要となるが。戦場の兵士の平均年齢も上がってきている。コウガも兵士になりもう20年に迫るが、それぐらいの兵は多くいる。皆そんなに金持ちだったかというとそうじゃない。金は軍から出る。当然戦績をあげれば金が出る。だから最近では経験と言い装備を兼ね備えたジジイ兵士の方が厄介ともいわれてたりもする。
「さーてぼちぼち動き出すか。どう動くべきか」
味方と合流することを考え軍がどう動く予定だったかを思い出す。そこから導き出した方向に向かい、コウガは歩き出した。
敵を警戒しながら進んでしばらく。建物の中にいるとわずかながら物音がコウガの耳に入ってきた。より注意深くそちらの方向を見る。
「...ってなんだ味方かよ」
「あんたは...」
「お前と同じくはぐれ兵だ。というより見覚えあるだろ。まったく同じ場所から離脱してきたんだから」
「あんたみたいなのいたか?」
「物覚えの悪い...と言いたいが、俺は狙撃兵でお前は前衛だから無理もない、ということにしておこう」
「そうしておいてもらえると助かる。ところで名前は?」
「俺はコウガ。ちなみに41歳だ。お前は...名前までは覚えてないが、AT-4にいただろう?」
「ジンだよ。おっしゃる通りAT-4にいた。ちなみに26ですよ」
「若いねぇ...と言ってももう少しでおっさんの域だなと言っても怒るお年頃か?」
「どう言おうが自由ですよ。ただこの時代で26は一般的にはまだ若造なんじゃないですか」
「ははは!そりゃそうか。そういや俺も41でもまだまだ甘ちゃんなことを確認したばっかりだったわ」
「?まぁいいや。そういえば最後、initialGがいるといってたのはあんたか?」
「おぉ。まさか聞いてたやつがいるとは」
「本当か?」
「あぁ。あの状況であんな笑えない冗談言うと思うか?」
「そうか。じゃあそこから生き延びたんだから幸運なのか?」
「まぁそうなるかね。できれば出会わない方が幸運だったかもしれんが」
「それを言うときりがない」
「それはそうと動こうか。できればどこかの陣営に合流したい」
「了解。陣営の見当はあるんですかい?」
「確信はできないが」
「十分。行きましょう」
コウガとジンはそう言いつつ再度移動を開始した。
「それにしても立った一機であそこまでの破壊力があるんだから恐ろしいものですね」
「ん?」
「initialG-4Xですよ。あそこまで隠し玉みたいにしなくてもよかったぐらいなのでは?」
「んー...どうだろうな」
「?」
「ジンよ、そのinitialG-4Xのうたい文句、知ってるか?」
コウガの質問にジンが投げやり気味に答える。
「戦場を圧倒する最強の兵。戦争すら終わらせる最終世代。でしたっけ?確かにあれがあればあっさり勝てそうですよ」
「...あぁ。まぁそう思うかもな」
「何か?」
「昔、俺が兵士になるかどうかぐらいのときか?似たようなうたい文句のがあったんだよ。確か、人ならざる兵士が戦場を圧倒。これからは人命の損害のない速やかな戦争の終息。だったかな。ありゃ確かにすごかった。こんなのに勝てるわけねぇって思ったな」
「へぇ、そりゃすごい。どんなのなんですか?」
「ただの完全型サイボーク」
「はい?」
「ありゃ確かにすごかった。確かに人間を凌駕していたな。今でも一応名前はあるぞ。その名も第一世代だ」
懐かしそうにコウガが笑いながら話す
「は?」
ジンがよくわからないというような表情を浮かべる。コウガが笑顔を消して言う
「現代兵器なんてそんなもんだ。あれほど絶対的だった機械も今や第一世代。逆に珍しいとされるようなものだ。最終世代?いいや、間違いなく次もあるね。人ってのは醜くそういうところでしぶといのさ」
今度はコウガが投げやりに言い投げる
「な...」
ジンが何も言えないでいると
「お、明かりだ。一応警戒して近づくぞ」
コウガがなんでもなかったかのように話題を切り替えた。
こうして二人はやや小さめの味方部隊に合流した。
DOLLS WAR 桐谷海斗 @kaito-kiriya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。DOLLS WARの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます