第12話 川の終着地点
どれだけ歩いたのか、わからないくらいの時間がたっていて海には月が浮かんで見えた。一人でずーっと喋りながら川のそばを通ってきた。
何も、何も怖くなかった。あの日に比べれば、全部がちっぽけだった。
どれだけ好きだったんだろう。あの笑顔に、どれだけ焦がれていたんだろう。
どこかで生きているという希望を、捨てたのはボクだ。
今でもずっと想っている。想っているのに、何も伝えられなかった気がする。
この先、会えないことを考えて苦しむより、よっぽど。
わがままな結末、それでもいい。
もし、ボクが消えた後、黒川が帰ってきてもいい。
ボクのことなんて忘れてくれていい。
海に右足、左足と入って数歩進んだ時、雨がたくさん降ってきた。ちょうどいい、このまますすめば楽になれる。結局ボクは、自分の事だけ。誰の事も考えてない。本当は自分勝手で、黒川の事もちゃんと考えられていたのだろうか。
脳裏にその考えが浮かんだ時、ボクはとんでもないことに気付いた。
ボクはさっき、自分のいなくなった世界に黒川がいてもいいと思った。それは、今のボクと同じなのではないか? 彼女を迎えるでもなく、置いていくなんて、ボクは、なんてバカなんだろう。バカすぎてまたおかしな笑いをしながら、泣いた。
雨の中、なぜかすんなり家路がわかって、ドアを開けた瞬間、ずぶ濡れなんてものじゃない姿に家族はびっくりしながらも迎えてくれた。
きっと、黒川もこうやって帰ってくる。ずぶ濡れじゃないだろうけれど。そう信じて眠った夜に、はじめてゆっくり眠れた気がした。
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