第11話 伸ばした手の先

 日が落ちていくのをみながら、家までの道を歩いた。結構な距離があったように思ったが、限界まで歩こうと田舎道を進んだ。

 こんな道があったのか、あの店はいつできたんだろう? そうやって歩いていると、川が目の前に現れた。川の存在も忘れていた。もしかして、ボクの記憶はおかしいんじゃないかと、またおかしなことを考え始めた時、目の前を、知っている顔が、良く知っている顔が横切った。


「くろ、かわ?」

 ふりかえった女性は、忘れられずにいた黒川に似ていた。

「黒川、お前、家に帰って、見つかって」

 そう声をかけた場所には、人なんていなかった。


「あは、あはははは、あはははははは!」

 ついに幻覚を見始めたか、どんなに思ったって、あの日から高校が終わるまでの間、探しても探しても見つからなかったのに。

「……どこに行ったんだよ、黒川、会いたいよ」

 自分も消えてしまえば、どこかで会えるんじゃないかと暗くなってほとんど何も見えない川のそばを歩いて、すぐ近くの海を目指した。

「なんで最初からこうしなかったんだろう。一緒に生きていけないのなら、この道しかないじゃないか。バカだなー、ごめんな、ごめん。俺だけ生きてて楽しんで、ごめんな」


 今から、行く。待ってて。

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