第9話 何をしていた?
連絡も自分からとらない息子に、何を言うわけでもない親には感謝していた。
ただ、春先に祖母の調子が良くないから帰ってこいと留守電に入っていたのに、迷っていたせいで、会えないまま、本格的な夏が来る前に他界したと連絡がきた。「通夜と葬式、くるでしょ?」と。母は泣きながら言った。
ボクは、何をしているんだろう。最低だ。自分の事しか考えていなかった。
それでもまだ悩んでいたボクに、大学で出来た友人は今すぐ帰れと言った。生きている時に伝えられなかった分、ちゃんと伝えてこい、と。
彼に背を押され、その日のうちに実家へ向かった。
まだここを離れてそんなの経っていないのに、ずいぶん長い間離れていたような気がする。この駅前で、黒川と別れて、それで……そう考えていたら、伯父が迎えに来てくれていて、肩を叩いた。
「どうした、ボーっとして」
「あ、えっと、あの、何でもないです。お久しぶりです」
「おう、それじゃ行くぞ」
「はい」
その場に立っていても彼女が現れるわけないのだから。
会いたい。
会いたいよ、黒川。
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