忘れ物

「はやなし忘れ物だ」

たかかわ君は僕にそう言う。

「俺とお前で経営した会社がこんなにうまくいくなんてな。あっという間に年商10億だ。よかったよ。二人で作ったロケットがアメリカの企業に売れて」

「まさかあのポンコツロケットがこんな値段で売れるなんてな。でも噂じゃミサイルに転用されるみたいだぜ」

「ミサイル?」

「そう。ミサイルだ」

たかかわ君はそう言って頷いた。

「どうやってミサイルにするんだ?」

「角度を変えるのさ」

「宇宙までいかなくていいのかい?」

「一度は宇宙に行くだろう。それで帰ってくるんだ。すごいミサイルだ。誰も撃ち落とせやしない」

「まさかアメリカ合衆国が動くとはな」

「いや、今回は一企業が買い取った」

「なんだか奇妙な話だな」

「つまり企業がそれを転用しようとしているんだ。それで買い手は中東にいる」

「武器を作るってわけか?」

「そういうことだよ」

「やたら物騒な世界になったもんだな」

「仕方のないことだよ。僕らに残された道に平和はないのかもしれない。あるとするなら一時の平和状態しかない」

「それも悲しいことだな」

「一時的な平和状態だっていつ崩壊するかわからないんだよ。それで僕らのミサイルがその均衡状態を破壊するんだ」

「なんのためなんだか」

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