僕らの会社

「それで?」

 たかかわ君は僕の目をじっと見ながらそう言う。彼の目は透き通っている。頬は角ばっていた。

「なんだよ?」

 僕は慎重に言葉を選ぶようにそう言った。

「この間のロケットの件だけどさ?」

「問題でもあったか?」

「新しいロケットの部品を買う必要がある」

 彼はカフェの中でストローでコーヒーを混ぜている。

「いくらだ?」

「五億」

「高いな」

 たかかわ君は僕より慎重派で物事をよく考えている。僕が社長より彼の方がずっと向いている気がした。

「買うか? 部品はフランス製の一流だ」

「商社が選んだのか?」

「少なくとも20億のロケットが作れる。人を乗せれば月までだっていけるさ」

「悪くないね」

 たかかわ君はコーヒーをすすった。僕も目の前に置かれたアイスティーを一口飲んだ。

「部品はいくらだってかまわないと僕は思う。その分高いロケットが作れる」

「でも高すぎちゃ買い手がつかないだろう?」

「俺たちは世界を相手にしてるんだぜ」

「わかった。金を出そう。足りない分はかき集めてくる」

「頼んだよ。俺は主に製造だからさ。金のことはまかせっきりだもんな」

「書類は?」

「ここにすべてある」

 分厚い茶封筒をたかかわくんはバッグから取り出した。

「カタログ、注文書、設計図、全部あるな」

「ほかに必要なものは、この紙に書いておいた」

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