あの飛行物体

「ねえ昔の言い伝えのことだけど」

 ゆいかは僕にそういう。

「UFO?」

「そう。UFOについて話そうと思っていたの」

「UFOって不思議だよね。あれで地球にやってこようとしたんだよね宇宙人は」

 僕らはUFOを二人で部屋の窓から眺めていた。

「UFOについて書かれた小説がいくつかあるの。はやなし君は知ってる?」

「そういう小説はたくさんあるよね。カート・ヴォネガットとか?」

 僕は適当に作家の名前を挙げた。

「カート・ヴォネガット……」

「カート・ヴォネガットはUFOについて書いていた」

「そりゃあSF作家だもんね」

「僕はUFOの不思議について何かを書こうと思ったことがあるよ」

「例えば?」

「惑星に不時着したUFOから失った恋人が出てくるみたいな」

 僕らの部屋の目の前でUFOはぐるぐる回っている。僕は続けた。

「そういえばUFOについて書いた作品のことだったね。僕は当時地球にいたときからずっとUFOなんて嘘だと信じていたんだ」

「今は西暦2019年よ」

「でも僕らの部屋の窓の外にはUFOが駐車場に止まっている。奇妙な世界だよ」

「仕方ないじゃない。こうなってしまったものは」

「僕はいつか元の世界を取り戻したいんだ」

 部屋の外のUFOはびゅーんと飛んで行った。

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