第20話 「セピア色の思い出②」


「遠野くん、朝のスピーチ良かったよ」

「私もそう思った」

「うん……私も……」


 図書館では、一部だけ人口密度が高くなった場所がある。

 それは、いつも決まった場所に座る来世の周辺だった。


 少年の両側には、秋子と千鶴が座っている。

 千鶴だけは席をひとつはさんでいるが、たくさんの席があまっているなかで、その場所を選んでいる理由は明白だった。

 さらに、山田 美知子も来世と接点ができてからは、少しだけ近くに座るようになった。


「今日は早く帰るから。さよなら」

「もう帰るの?」

「寄る所があるから。今日は着いて来ないで」


 来世が小学生に興味がなくとも、いつも図書館に通う少女たちへの挨拶は忘れなかった。

 秋子は来ないときもあるが、おおむね決まった三人が図書館にいる。


「花岡先生、今日はこれで失礼します」

「珍しいわね」


 最後に声をかけるのは、図書館の司書教諭ししょきょうゆつとめている花岡という先生だった。

 二十四歳の女性で、さわやかな笑顔が特徴の先生でもある。

 好みの異性という意味では、来世にとって直球な人物でもあった。

 さすがに、自分の年齢を自覚する来世がアプローチすることはないが、基本的なコミュニケーションは欠かさなかった。


 そして学校の外へ歩みを進めていく。

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