「二度目の決断」

高校は全日制に行くことが当たり前だと思っていた奏は、通信制高校の素晴らしさを知った。学校で毎日授業を受けるのではなく、自分のやりたいことをしながら高校卒業資格をもらえるこの制度に驚いた。病気になる前の奏は何が何でも退学して高卒認定試験に合格しなければならないと思っていたが、それは奏の思い込みだった。

 病気になって五ヵ月が経ったが、少し症状が変わっていた。今まではずっとうつ状態で沈み込んでいたが、そう状態(気分が著しく高揚した状態)にもなるようになり、家族へのイライラするようになった。また、不安になると息苦しくなったり、過呼吸になり、手足がしびれるようにもなった。悪くなってはいないが、まだ良くなったとも言えない状態だった。

 しかし、早く転校先を決めるために通信制高校に見学に行った。電車に乗ることが少し怖かったし、帰ってくると疲れてぐったりした。奏はスクールカウンセラーに勧められた学校ではなく、自らネットで調べ、見学に行った学校に決めた。その高校はネットで高校卒業資格を取るためのレポートを出す高校で、スクーリング(学校に行って対面授業を受けたり、テストをしたりする)は五日程度で良い学校だったので、体調面に不安のある奏でも卒業できそうだと思った。

 これで新しい生活が始まる。森高校は卒業できなくて、奏が理想としていた道ではなくなってしまったが、高校卒業資格を取るための勉強をしながら病気と闘って、少しずつ回復していけば受験に向けた勉強をしたり、自分の将来の選択肢になるような体験をしたり、趣味をしたりすることができる良い決断となった。やっと一歩前に進むことが出来た。



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