「負のスパイラル」
三学期が始まった。しかし、奏は今布団の中だ。何故なら始業式の前日にインフルエンザになってしまったからだ。でも奏は学校にいけないことを、正直良かったと思った。そして、そんなことを思う自分を責めた。
奏を除くクラスメイト達は二月に行われる合唱コンクールに向けた朝練習と放課後練習が始まっていた。奏は五日間欠席しなければならないので、その五日間の練習分が遅れてしまった。そして、五日間が経って復帰した次の日、いつも一緒にいたメンバーの一人がインフルエンザになってしまった。ここでも奏は自分のせいだと思った。周りは皆、奏のせいじゃないと奏の思い込みを払拭しようとしたが、奏の性格では、一度思い込むとなかなか考えを変えることはできなかった。しかし、合唱コンクールの前日にはクラスの半分以上がインフルエンザや発熱で欠席し、学級閉鎖になった。インフルエンザをばらまいたのは自分だと思っているのに、学級閉鎖になったことは喜んでいた。
「やった、三日間も休みだ!勉強できる。」
こう思うことこそ責めるべきなのに、奏の中では勉強がトップで、勉強の為なら何を犠牲にしてもよいと思っていた。初めの二日間は集中力がないものの、なんとか勉強できていた。そして三日目。いつものように公民館で栄養ドリンクを片手に勉強しようと思っていた。しかし、どんなに時間がたっても勉強する気すら起きない。挙句にスマホに手を出してしまい、罪悪感を持ちながらもゲームをしてしまった。
また、最近はご飯を食べることが面倒臭くなっていて栄養バランスの乱れからか、爪にできた横線を見つけて不安になっていた。そのため爪が気になって、もう勉強どころではなくなっていたのだ。奏はもうだめだと思い、早めに家に帰った。でも勉強しかない奏にとって、勉強すらできなくなった自分が悔しくて、奏は立ち直れなくなった。それは翌日も続き、学校にも行けなくなってしまった。両親に学校にいけない理由を聞かれても話せないし、言葉が浮かばない。ベッドの上で一人、一日中苦しんでいた。
両親が心配して担任に電話すると、担任は
「相変わらずのわがままだ。」
と言った。さらに、両親も無理やりスクールカウンセラーに奏を連れて行こうとした。こんな状況に奏は
「もう誰も自分を理解してくれる人なんていない。いや、元々そんな人自分にいるわけがない。自分が勝手に他人を信じていただけだ。」
と思った。奏は人間不信になったのだ。
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