「悪夢の始まり」

中間テストの悔しさが消えない奏は、科目数が多く大変な期末テストで、クラス順位一位という目標を再び掲げた。そして、期末テストまであと二週間を切った大切な時に、奏に異変が起きる。(まぁ第四話で書いた勉強尽くしの生活を三ヶ月以上も送っていて、異変が起きない方が凄いが……)

奏はこんなことを考えるようになった。学校で宿題をして来ないクラスメイトのために授業の時間が減ったり、授業中に私語や雑談のある授業を受けているこの時間は無駄なのではないか。友達としゃべっている時間も友達に気を遣うばかりで、勉強に充てるべきなのではないか。自転車通学で通学時間に勉強出来ないなんて、どれだけ損をしているのだろうか。

確かにそれも正論ではあるかもしれない。でも、自転車で通学している時くらい、勉強のことを忘れて風を感じても良いのではないか。友達としゃべる時くらい息抜きだと思って本音で話せば良いのではないか。楽しむ時間も必要なのではないか。普通ならそう考えるのだろう。でも、この時の奏の頭の中には息抜きの「い」の字も、楽しむの「た」の字もない。こんなことでは学校に行くことが楽しく無くなる。勿論、奏も学校を楽しい場所とは思っていない。むしろ時間の無駄であると思っていた。期末テストが迫っているのに学校に行きたくない。そう思う自分を責めて、無理をしてまで学校に行く。これがまさしく悪循環である。奏の心も体も限界を迎えていた。

しかし、奏がどんなに苦しくても期末テストはやってくる。勉強のやる気が出ず、ろくにテスト勉強は出来ないし、授業だって集中出来なくて進んでいった範囲は全く勉強していない状態で挑むテスト。勿論結果はMBBで忙しかった時よりも悪かった。クラス順位では初めての二桁かつ、初めての半分より下を取った。奏は自分に絶望した。

期末テストが終わると冬休みになる。期末テストは散々だったが、受験はまだ終わっていない。両親との話し合いの末、予備校の冬期講習にも参加することにした。予備校の授業は凄い実績のある場所だけあって講師陣の授業が凄い。でも、家から遠く、交通費もかかる夜遅くなると心配だからと、両親が通うことは許可してくれなかった。

冬休みはそんなこんなで色々あったけど、充実していた。でも冬休みが充実していればしているほど三学期のスタートが嫌になる。奏もそうだ。

「私、学校行きたくない。もうやめて、家で一人で勉強する。予備校に通って高卒認定資格も取って、志望校に合格するために勉強するから。」

「せめて高校に頑張って入ったんだから卒業してほしいな。」

「高校卒業できなくて大学行っても、卒業できないんじゃないの?」

奏も心の中では分かっている。でも、体が動かないんだ。もうこの時すでに悪夢が始まっていたのだ。

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