「一つ目の決断」
高校生活最初の吹奏楽部の演奏会は、至らない部分が多く、満足する結果は出せなかったが、無事に終わった。この演奏会が終わるとほとんどの先輩は受験勉強のためにコンクールに出ずに引退する。奏の憧れの先輩も国公立の大学を志望していたので、引退してしまった。
演奏会が終わると、コンクールに向けた練習がスタートする。コンクールには人数制限があるので、二・三年生はA編、一年生はB編に出る。勿論、演奏する曲も違うので、一年生は一年生だけで個人練習やパート練習、合奏を行うことになる。奏は憧れの先輩が引退し、一年生のクラリネットパートに友達もいないので、余計に部活が楽しくなくなってしまった。コンクールの前には一週間程度の合宿もあり、不安はどんどん大きくなった。
我慢が出来なくなった奏は部活を辞めることを考え始めるようになり、ついには退部を決断した。クラリネットが吹ける場所は他にも沢山あるし、勉強に専念してMBBのメンバーよりも良い大学に行きたいと思ったからだ。顧問の先生には最初は止められたが、理由を話して合宿が始まる前には退部した。
「これでやっと勉強に集中できる。これからは勉強を頑張るぞ!」
そう奏は決意した。
しかし、これから上手く行くと思いきや、まだまだ奏に試練が与えられることになる。そんなことを知らない奏は、勉強に対するやる気で満ち溢れていた。
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