「憧れから孤独へ」

 ついに奏は憧れだったMBBに入部した。しかし、すぐに楽器の練習が始まるわけではない。楽器のパートごとに分かれての自己紹介やそれぞれの実力・経験者の中学校の吹奏楽部の状況の確認があった。

「えっと…一年C組の倉橋奏(くらはしかなで)です。あっ、一応…経験者です。よろしくお願いします。」

クラリネットパートの一年生は七人で、男子二人、女子五人。しかし、奏はあることに気づいた。それは自分を除く女子四人は二人ずつが同じクラスで二組がそれぞれすでに仲良くなっていたのだ。男子も同じクラスの人はいなくて、奏にとってはパート内のみんなが初対面だった。

 奏はパニックになった。自分から話に行くことが出来ない奏は、同じパートに友達ができず、部活の時間は一人で過ごすようになった。MBBの存在は憧れから孤独に変わっていった。

 この間入学して入部したと思ったら、MBBの演奏会がもう迫っていた。MBBは孤独だが、クラリネットが嫌いになったわけではない。黙々と一人で個人練習を重ねた奏は先輩テスト(曲のパート分けを決めるために一人ずつが先輩の前で曲のワンフレーズを吹く)でファーストになった。合奏も決して楽しくないわけではない。そして、この演奏会は憧れの三年生の先輩と一緒に吹ける最後の舞台だ。絶対に成功させよう。

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