墓地へ肝試し

k.s

第1話



「レイ。俺の家の近くに草木の生い茂った小高い山があるだろ?今まで気付かなかったが墓地があるのが分かったんだ。」

「今夜、肝試しに行こうぜ。」

突然、仕事先の先輩のハルさんとコウさんに誘われた。

俺は断る理由が無いから誘いに乗った。

昼飯を食ってる間、先輩2人は肝試しの話で盛り上がっていた。

仕事が終わり帰る支度をしていると、

「レイ。今日夜中の2時に山の前に集合な。」とハルから声を掛けられた。



夜中の2時。

夜の山はとても静かで異様な雰囲気を醸し出していた。

頂上に続くであろう古くて急な石階段の先は灯りを照らしても見えない位闇に染まっていた。入ったら二度と出られないのでは無いかと錯覚してしまう程の闇の濃さだった。

しかし、先輩達は談笑しながら階段を転げ落ちないように錆びた手摺を使い登って行く。

俺も少し遅れて階段を登って行った。

階段の左右は背の高い草木の壁ができていた。風でざわざわ揺れる音が恐怖心を掻き立てる。



突然、目の前が開けた。

墓地に着いたのだ。

着いてすぐ、周りの異変に気付いた。


墓地の周りだけ草木が枯れているのだ。


墓地から少し離れた所の草木は180㎝ある俺をゆうに超える程高く青々しいのに、墓石が立っている周りは木が一本もなく、草は手で引きちぎられた様な痕があり茶色く変色していた。

どう見ても不気味だった。


先輩達は携帯で撮影したりしていたが、不気味さに興奮したのかヒートアップし墓石に小便をかけたり、地蔵で遊び始めたのだ。

俺は先輩の行動や墓地の雰囲気に耐えられなくなり先輩達に先に戻る事を伝えた。からかわれたが、今はからかわれた怒りより恐怖の方が勝っていた。



早足で階段を降りた。

少しでも早く住宅の明かりがある所へ行きたかった。

黙々と階段を降りていると背後から俺のとは違う歩く音が聞こえた。

先輩達かと思ったが何かが違う。

話し声がしない。それに俺の動きに合わせている様に着いてきている。

後ろを見たが何もいない。闇の中に石階段がぼんやり浮かび上がってるだけ。

一瞬頭が真っ白になり思考が止まったが、すぐに違うと心霊スポットでは無いと自分に言い聞かせた。


やっと山の入り口が見えた。

ホッと気が緩んだその時。

背後の足音が突然走り出した。

俺も一拍遅れて走った。

すごい勢いで足音が近づいてくる。

俺は必死に叫びながら走った。助けてくれ、と。



山を出た瞬間、「何か」が俺の横を通り抜けた。勿論、その「何か」が生き物であれば抜かした姿が見えるはずだが、俺の目の前には家の明かりと街灯の明かりだけしかなかった。




「レイお待たせー。」

ふと、声が聞こえた。

前を見ると先輩2人がこちらに向かって歩いてくる。

俺は街灯の下でぼーっとしてたようだ。


だんだんと先輩達が近付いてくる。

すると突然立ち止まった。



そしてこう言った。




「おい、レイ。









その後ろのヤツ、誰だ?」






完。

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墓地へ肝試し k.s @sayaka78

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