第4夜 脅迫
あの夢を見て以来、私は夢を見ることが恐ろしくなった。彼のためなら戻れなくても良いと、そう答えたことに酷く後悔していたのだ。しかし、その思いを打ち砕くように、私はまた夢を見ることになる。
その夢は最初から異質だった。私の周りに沢山の人がいたのだ。今までの夢では、私の周りには家族や彼以外の人間が現れることはなかった。だからこそ、夢の中の私も最初から警戒することが出来たのだろう。
夢の中で、私は動物園にいた。一人で動物園を回っていると、視界の端に見知った人間が二人うつった。一人は私がよく知る人物。彼のことだ。そしてもう一人は‥‥‥‥私の唯一無二の親友だった。
それを見た瞬間、私の中に沸々と怒りと嫉妬が浮かんできた。人混みをかき分け、私は彼の腕を掴む。「これはどういうことだ。浮気だ。」と恥も外聞もなく叫ぶ私に、彼はこう言った。
「愛してくれないのなら、彼女を連れて行く」
その言葉に頭を酷く殴られた衝撃と共に私は目が覚めた。
目が覚めて、泣いた。
恋に落ちた相手が浮気をしたからではない。親友が巻きこまれてしまうかもしれない恐怖に、私は泣いた。
彼を受け入れることを拒絶したから、彼は代わりに私の親友を連れて行くのだろうか。させない、そんなことは絶対にさせない。大切な親友を、私の身代わりには出来ない。
私は、この先の諦めと共に彼を受け入れることを選んだ。
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