第1夜 再会
それからしばらく経ち、私は夢のことなどすっかりと忘れて日常生活を送っていた。そんな夜、私はあの夢の続きを見たのだ。
私は、家族と共に海へ旅行に来ていた。私には一人弟が居るのだが、 私は、現実には居るはずのない二人目の弟と手を繋いでいた。
私はその弟が愛おしくてたまらず、親の見ていない隙にこっそりとその弟と二人きりで抜け出したのだった。
「海の祠へ行こう」
まだ幼い声でそう私に提案する弟は、自慢ではないが、柔らかな髪にくりりとした目を持つ、可愛らしい姿をしていた。私は弟の提案に了承し、その海の祠へと向かった。
確かに、岩場の奥の奥に、その祠はあった。祠には犬のようなものが祀られていて、弟はそれが見たかったらしい。
「もう行かなくちゃ」
暫く眺めていると、弟はそう言って立ち上がり、両親達の元へと駆けていった。私も慌てて後を追い、両親の元へ戻ってきたのだが、肝心の弟がいない。
「あなたに弟は一人しかいないでしょう?」
私は、冷や汗をかいて飛び起きた。
居なくなった弟について訪ねて返ってきた答えが、酷く気味の悪い物に思えたのだ。しかし、現実に返り落ち着いたところで、何故か私は或る確信を心の中に持ってしまった。
ーあの弟は、雪山で出会った狼なのだ。と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます