コノ夢見ルベカラズ
釜飯
前夜 事の始まり
ーこれは、私が見た夢の話。
ある日、私はとある夢を見た。荒れ狂う吹雪の中、彷徨う夢だ。突き刺すような寒さに痛みすら覚えながら、私はこの寒さをしのげる場所を探していた。
「この先に行けば、戻れなくなる。良いのか?」
どれくらい彷徨っただろう。突然、目の前に一人の老人が現れた。しゃがれ声で、私の目を真っ直ぐに見つめ、そう問うたのだ。
寒さも限界に達していた私は、その問いの真意を聞くこともなく、「構わない」と答えた。すると老人は悲しそうな顔をして消えたので、私は先へと進んだ。
少し歩くと、目の前には大きな洞穴があった。これで寒さが凌げる、と、私は喜んでその洞穴へと飛び込んだ。はたしてその洞穴にいた先客は、巨大な一頭の狼だった。
私は一目見てその狼に恋をした。その狼と共に居たいと思った。それを見透かしているかのように、狼は私に言った。
「私と共に来れば、もう2度と戻ることはできないが、それで良いのか。」
戻る、の意味がよく分からなかったが、とにかく私はこの狼と共に居たかった。しかし、私は一つの荷物すら持っていない。彼と共に行くのなら、旅支度をしなければ。
私は彼に「共に行きたいが、まずは身支度をさせてほしい」と頼んだ。すると狼は私を背に乗せ、一瞬のうちに私の自宅へと私を送り届けてくれた。
狼は一言、私にある事を告げると去って行った。
私は嬉々として荷物をまとめ、狼の元へ向かおうとするが、家族が必死に止める。もみ合っているうちに、私は目を覚ましていた。
「○○山で待っている。」
狼への恋慕と、狼に告げられた、どうしても思い出すことのできない山の名前を胸中にかかえたまま。
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