第3話
シャボン玉
初夏の風が吹き込み、リビングのカーテンが揺れる。
窓のそばに座り、冷たいアイスをかじる。
小さな庭の木が揺れ、葉の擦れる音がする。
何の変哲も無い午後2時過ぎ。
風に乗りシャボン玉が飛んでくる。
一個、二個…
近くで子供がシャボン玉してるのかな。
シャボン玉の1つが庭を転がる。
今は割れないシャボン玉があると従姉妹が言ってたな。
そんな事を思いながら、スリッパを履いてシャボン玉を拾いにいく。
風が吹いて足元まで転がってくるシャボン玉に違和感を覚える。
近づくとシャボン玉と思えないツヤと厚みがあるように見えた。
拾うのを少しためらっていると、溶けたアイスが棒をつたって気持ち悪い感触が指に伝わる。
早く拾って部屋に戻ろう。
ぼとっと音が聞こえた。
私の目の前には落ちたアイスと誰かの足が見える。
視界がずれ、浮き上がるような不思議な感覚がした。
足は向きを変え、部屋の方へ歩いていく。
ふわふわと上がる私の目線。
家の屋根に近づく高さになったとき
部屋の前で誰かは嫌な笑いを浮かべて手を振っていた。
私はそのまま風にのり流されていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます