第3話

シャボン玉



初夏の風が吹き込み、リビングのカーテンが揺れる。

窓のそばに座り、冷たいアイスをかじる。

小さな庭の木が揺れ、葉の擦れる音がする。

何の変哲も無い午後2時過ぎ。


風に乗りシャボン玉が飛んでくる。

一個、二個…


近くで子供がシャボン玉してるのかな。

シャボン玉の1つが庭を転がる。

今は割れないシャボン玉があると従姉妹が言ってたな。



そんな事を思いながら、スリッパを履いてシャボン玉を拾いにいく。

風が吹いて足元まで転がってくるシャボン玉に違和感を覚える。


近づくとシャボン玉と思えないツヤと厚みがあるように見えた。

拾うのを少しためらっていると、溶けたアイスが棒をつたって気持ち悪い感触が指に伝わる。

早く拾って部屋に戻ろう。



ぼとっと音が聞こえた。

私の目の前には落ちたアイスと誰かの足が見える。

視界がずれ、浮き上がるような不思議な感覚がした。

足は向きを変え、部屋の方へ歩いていく。

ふわふわと上がる私の目線。

家の屋根に近づく高さになったとき

部屋の前で誰かは嫌な笑いを浮かべて手を振っていた。

私はそのまま風にのり流されていった。




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