第2話 生活拠点は孤児院

パチッ…パチッ…パチッ…

現在、森を抜けた先で火を焚き野宿をしている。

それは何故か?時は少し遡る。


クレイジーウルフを倒した後、森を抜けるべく北に歩みを進めたのだが所詮は三歳児……身体が小さくその分歩幅が小さい即ち進みが遅かったのだ。


難なく森を抜けたのだが日が沈みかけ、このペースで行くと街に着くのが夜になるとの事なので今日は野宿することになった。


《シシオウ様、私のミスで野宿する羽目になってしまいまして申し訳御座いません。》


気にしなくて良いよ、別に急ぐ訳じゃないそれに野宿も旅の醍醐味みたいなものだし。


《お気遣いありがとうございます。それにしてもシシオウ様は何も無いところから火を起こせるのですね。》


時間は掛かるけど摩擦熱を利用すれば誰でも出来るよ。まぁ、俺の場合はそれを手だけで行うので異常とも言えるが……そこは触れないで欲しい。


《善処致します。では、今の間にこの世界の説明をさせて頂きます。》


説明は日が昇るまで続いた。

内容としては、一年は三百六十日、一月は三十日、一様、春夏秋冬はあるらしいのだが場所によっては暑い地域寒い地域があるとの事。

種族、土地の事はこの眼で観て感じたいのでその都度説明をお願いした。


次にこの世界の理についてだが、全ての生物にはステータスがあるそうだ。【開示】と念じるとステータス画面が出て閉じる際は閉じると念じるだけでいいそうだ。

ステータス画面は本人しか見れず、名前、種族、職業、スキルが記載されている。

因みに、スキルとは地球で言う特技や技能みたいなものらしい。


試しに自分のステータスを見てみたのだが、


名前  シシオウ

種族  人間

職業  受け師

スキル なし

EXスキル 獅子王流体術

     堕天神の眼



EXスキルは世界に一つしかないスキルの事らしい……それにしても、職業が受け師って…そんなとこまで受け身なんですか!?


ベルとそう言う会話が有りながら、お金の事もしっかり聞いた。まず単位だが、


鉄貨……一つ百円

銀貨……一つ一万円

金貨……一つ百万円

白銀貨……一つ一千万円


が世界共通通貨である。

丁度ここまで話終えた所で日が昇った。


《シシオウ様、続きは次回に致しましょう。まずは街まで行き当分暮らせる拠点を探しましょう。》


そうだな、最低でも後十歳は年をとりたい。今の身体では、満足に獅子王流体術を奮う事が出来ないからな。


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ここは迷いの森を半日ほど北に進んだ位置にある街【ラーセル】

南は迷いの森、北と西は山があり東は川がある。辺領にある為時折、魔物や盗賊に襲われることもあり、街全体を石の壁で囲っている。


「今日も門番お疲れさま。」


「「お疲れ様ですヨルン団長!」」


ラーセルには騎士団があり毎朝欠かさず団長もしくわ副団長が異常が無いか見回っている。


「異常は無いか?」


「はっ!今の所御座いません!」


「そうか、交代の時間まで気を抜かない様にしっかりやれよ……ん?」


ふと、ヨルンがいつもの様に南門前に拡がる平原を見ると遠くの方で誰かがフラフラと歩いてくるのが分かる。


「こんな朝から誰かくる……あっ!?倒れた!?ちょっとお前一緒にこい!魔物か盗賊に襲われた冒険者かもしれん。」


ヨルンは倒れた人物に急いで駆け付ける。そこに居たのは何処にでも有るような服を着た子供だった。


「こ、子供?どうして?いや、それよりも生きているのか?」


うつ伏せに倒れる子供を抱え、息が有ることを確認し直ぐさま街にある騎士団本部に向かう。


「坊主?いやお嬢ちゃんか?いや、どっちでもいい助けてやるから頑張って生きろよ。」


門番にこの子を本部に行く事と目立った外傷は無いが、もしかしたら盗賊あるいは魔物に襲われたのかもしれないから警備を強める様にと伝え街に入る。


「う…うーん…。」


「気付いたか?大丈夫か?」


「おなか、お腹が空いた……。」


「よし任せろ、腹一杯食わせてやる。」


本部の医務室に連れて行く予定だったが、行き先を孤児院に変更する。そこならば、治療と食事そして何より子供の扱いが上手い人が居るからだ。


「すまない、エレナ先生はいるか?」


孤児院のドアを開け大きな声で呼ぶ。

奥の部屋から女性が機嫌の悪そうな顔でやって来る。


「こらっ!ヨルンさんそ、ん、な、に大声で……その子は?ヨルンさんの隠し子?それともソッチの趣味に目覚めてさらって……。」


「きて無いからな、それに俺の子供でも無いから。南門側の平原で倒れて居たんだが兎に角、飯と治療をお願いしても良いか?それと詳しい事情を聞いてあげてくれ、俺じゃあ怖がらせてしまうかもしれん。」


「こんな幼い子供が…任せなさい、お腹いっぱい食べさせてあげるからあそこに座らせなさい。」


「頼んだ、俺は本部に連絡してくるから後でこの子の事聞かせてくれ。それとお前は良い子にしてるんだぞ。」


抱えていた子供を座らし頭を撫でるヨルンに無言で頷く、それを確認してエレナと軽く挨拶を交わし孤児院を出ていく。


《シシオウ様上手くいきましたね。》


ああ、ベルの言う通りして正解だな。普通に考えたら子供が何事もなく街に着いたら怪しまれる事この上無いしな。後は打ち合わせ通りの設定で乗り切るだけだな。


《その通りで御座います。》


ベルと会話してる間に目の前のテーブルに、サラダとシチューそれとパンが並べられた。


「さあ、遠慮無くお食べ。」


こちらに来てから丸一日食べてないだけあって流石に腹ペコである。

直ぐにテーブルの上はまっさらになった。

「おかわりは?」と聞かれたが首を横に振る。それを確認して前の席に腰掛ける。


「キミの事を知りたいのだけどまずは自己紹介からね、私は此処の孤児院の責任者でエレナといいます。周りの人からは、エレナ先生と呼ばれているからキミもそう呼んでちょうだいね。あと、私は人間じゃなくてエルフと呼ばれる存在なので見た目が少し違うけど気にしないでね。私の事はこんなものかな?」


確かに目の前のエレナ先生は先程のヨルンと言われた人よりは、綺麗な顔立ちをしてるし耳の形も少し違う様に思えるがそれだけだ。元々、目が見えなかったので此方の人は元より地球人の顔すらも見たことが無いのだ。


「それとキミを此所に連れて来た人は、この街の騎士団団長で名前はヨルン。まぁ、見た目通り暑苦しい人だけど気のいい人よ詳しい自己紹介は本人に聞いてね。それじゃあ今度はキミの事を教えて貰えるかな?」


「こことは違う世界から転生しました。」とは流石に言えないので、事前にベルと打ち合わせした設定で話を進めていく。勿論、年相応の答え方で。


「名前は…シシオウ…それしか解りません、気付いたら森の近くにいました。僕はどうなるんでしょうか?」


「どうするも…記憶喪失だし、キミが良ければここの孤児院に居て貰っても構わないけどどうする?」


「自分で言うのも何ですけど、僕みたい怪しい人でお金も持ってないけど良いんですか?」


「ふふっ…怪しいって…こんな可愛らしい子供が何かできるの?それとお金の事は気にしなくていいのよ。ここを出ていった子達からの寄付が毎月入ってくるから。」


「そうですか…でしたら稼げる様になるまでお願いしても宜しいでしょうか?」


「良いわよ。所でシシオウ君は何歳かしら?」


「三歳です。」


「三歳!?どれだけしっかりしてるのよ…まぁいいわ、ここの子達を紹介と孤児院の案内、住むためにしてもらう事の説明をするから付いて来てきて。」


「はい。」と返事をしエレナ先生の後を付いて行く。

異世界に来て二日目で、当分の生活拠点である孤児院に入るのであった。それから十年、武術の土台である身体のトレーニングを行いつつ、ベルにこの世界の勉強とこの眼のトレーニング(後にこの眼の事を魔眼と呼ぶ事を知る)を行って過ごした。

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