第4話 合流

「早く目的地に向かいましょう。そこにはあなたの仲間がいます。もうチュートリアルを終え、あなたを待っているかもしれません」


端末からの声は、相変わらずおせっかいだった


「目的地か。地図なんて持っていないと思うが」


どこかに入ってるのか?


そう思ってポケットを探ろうとした


「地図は端末の画面に表示されています。赤い点が合流地点で、黄色い方はあなたのいる場所。矢印の方角は、あなたの向いてる方です」


説明ありがとう


うっとうしい気もしたが、俺は端末の画面をのぞいた


「そんなに遠くないな。結構近くだ」


待たせても悪いし、とっとと向かおう


「とは言え、いつ帰れるんだ?」


もうこの場所に来てから確実に5分経過したんだが


大きな岩の間を抜けて進んでいくと、仲間らしい人影が見えた


俺のように装備を付けてるので、変な格好をしてるな


というか、黒魔術を使う魔女っぽい


「あら? むさくるしい格好の男が近づいてきたと思ったら、あなたは上田君じゃない」


俺のことを知ってる?


と思ったら、コイツの顔に見覚えがあった


「お前、紗雪か?」


「下の名前と、お前呼ばわりはやめて欲しいわ」


「ごめんなさい。佐藤さん」


俺の仲間であるコイツは佐藤紗雪


俺と同じ学校に通っていて、校内では結構有名


名前に反して真っ黒な髪を腰ぐらいまで伸ばしているので、日本人形を思わすような造形にファンは多いようだ


ちなみに、俺の名前は上田直樹


「それにしても、変な格好をしてるわね。鎧を着てるのに大砲みたいな銃を持って歩いてる。このゲームより、お笑いコンテストに参加したほうがいいんじゃないかしら?」


見た目の良さに反比例し、口はかなり悪い


「まあいいわ。せいぜい盾にでもなって、私の足を引っ張らないで欲しいわね」


「無事合流できましたね。次のミッションに進みましょう。矢印の方角に進んでください。そこは村があります。村人から話を聞きましょう」


再び、声が聞こえた


「行く前に情報交換をしましょう。あなたはこのゲームのことをどれだけ知ってるの?」


紗雪が強い口調で俺に言う


「そう言われても、この端末が送られてきて、気が付いたらこんな場所にいただけだ。それ以外は全く知らない」


「私も同じよ。端末に書かれてることを読んだ時、タチの悪い冗談か何かだと思ったわ。」


そう言って彼女は腰にあるポーチから、端末を取り出す


俺の物とは違い、彼女の髪のように真っ黒だ


「しかし、私の予想に反して、このゲームは無事に始まったわ。いつ終わるのか分からないまま続いている」


そこで終わらず、彼女は続ける


「ゲームと言うなら、もしかしたら夢のようなものかもしれないわね」


「夢?」


「そう。私たちはどこかに連れてきたわけではない。同じ夢を見させられてるだけかもしれないわ。いや、あなたは私の夢の登場人物であり、夢を見てるのは私だけかもね」


「逆の可能性もあるんじゃないか?」


「私があなたの夢の登場人物だって言うの? そうね。否定できないわ」


「でも、どうやってら帰れるんだろう?」


俺は彼女に、疑問をぶつける


「ミッションを終わらせることでしょう。もしかしたら、この世界で死んだら戻れるかもしれない。でも、それが本当の『死』にならない保証はないけど」


「どういうことだ?」


この世界は夢じゃなかったのか?


「夢ではなく、現実の肉体を使ってるかもしれない。夢であっても、現実の肉体に影響を及ぼさない保証はないわね。できる限り傷つかないようにするのがいいという訳。分かった?」


「はい、分かりました」


「なら、私の前を盾になって歩きなさい。ローブよりも鎧のほうが防除力が高いわ。生き残りたいなら、パートナーを庇ってね」


こうして、明らかにパワーバランスが悪い、俺と彼女の即席コンビが誕生した

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