2016.10〜2017.3
結局、入院に必要な血液の数値が足りないとかなんとかで母が最初に入院したのは10月だった。
母がいなくなった日からは、父親が弁当を作り始めた。
母の美味しい料理と比べてしまうとやはり劣るが、それでも家族のためにと頑張っている父親の感情が伝わってきた。
母の味が恋しいときもあったが、既にどうしようもなくなっていた。
そして学校ではテストやら修学旅行があり、それなりに充実した日々を過ごして母のいない生活にも慣れた頃。
入院してから2ヶ月程で案外あっさりと、退院した母が家に帰って来た。
本題から逸れるが、僕の話を少しだけ。
僕は昔から本をよく読む子供だった。
最初は児童文学から。次第に母の薦めるミステリ小説なんかも読むようになり、お互いに感想を言い合って楽しい時間を過ごした。
そしてとうとう本好きを拗らせ、僕は高校で文芸部に入った。
いくつかある兼部の一つだったが、僕は小説を書くことに熱中していた。
そしてその1番の読者は母親。
実は、僕は以前にも小説を書いたことがある。
小学6年生の夏休みの自由研究だ。
今読み返すと既存作品のパクリばかりでとても読めたものではないが、それでも母は
「この雰囲気ええなあ」
「オチのつけ方がうまいわあ」
などと言って褒めてくれた。
お世辞も感じられない、純粋な賞賛。
それが嬉しかった。
新作を書くたびに読んでもらい、その度に温かい言葉を母から受け取った。
だからこそ今になってもこうして文章を書き続けている。
さて、母が退院した話に戻ろう。
家に帰って来た母は本当に元気そうで、本当に病気なのか疑ってしまうくらいだった。
だからこそ僕はこの時から暫く、母親が病気などとはほとんど意識しなかった。
そして例年と同じように大晦日や正月を満喫し、兄の大学合格を祝い、普通の日常を過ごしていった。
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