第4話

彩多キミトシの、作業ブースの複数のディスプレイには今回の戦争で生きた人物データが映し出されている。

その中からまず、ロシア連邦の南方、黒海とカスピ海にはさまれたコーカサス地域に近い村を呼びだす。


「コイツはモノになりそうだ」

戦場報道カメラマンとして活動していた、森谷タダシのデータを作業台へ乗せた。

大戦末期、ますます戦闘が激しくなる中、コイツは、村の住民を最後まで味方の軍、敵国の軍双方から守り通し終戦を向かえた、つわ者。


森谷タダシで全検索をかけ、関連する存在データをすべてブロックファイルにコピーした。

この人物のデータは体験型ゲームソフトへの応用が期待できる。

フォルダに名前を付け商品製作部へ電送指示を入力。


彩多は、次の生き残りの仮想人間の呼びこみを行う。

《井瀬まゆ》という仮想人間が目に止まった。



その時、受付から俺に最優先での来客の通知が入る。


「いったい誰だよ!」


社運をかけたこの仕事より優先させる客なんて…

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