第3話

今回の第106次世界大戦を独占放送しているユーロ放送局は、全世界にリアルタイムで戦況を3次元の立体マップのデータを交えながら詳しく伝えていた。

画面いっぱいに映し出される報道プログラムのアナウンサーが各国の言語で満面の笑顔、高陽しきった声で語りかけた。

「第106次世界大戦は終結しました。今大戦での最大戦勝国は日本国に決定しました。日本国軍の兵士達は実に良く戦いました」


日本国軍の完全なる勝利だった。

勝因の最大理由の一つは、大戦末期に電撃的にインドと結ばれた軍事同盟だったが、日本国軍の適切に配置され、統制のとれた各部隊の活躍も評価された。

「実に適切に正確にプログラムされた日本の優秀な兵士達の士気は最後の最後まで高いレベルを維持していたのです」

と戦術戦略解説のプログラム人間の解説者が画面データを映し出しながら説明を始めた…


こうして日本時間2027年8月29日16時05分。

世界98カ国の国と地域が参加した第106次世界大戦WORLD-CUP-WAR-106は終了した。


戦死者の内訳は、プログラム兵士8億5706万人 プログラム民間人2億6544万人。


使われた限定核爆弾は34個、新型の化学兵器は6種、62万トン、生物、細菌兵器は幸いにもヨーロッパのごく一部で使用されたのみ。


各国が競い合い、独自に開発された最先端の技術で生みだされる地球規模の架空戦争。

世界最大の戦争ゴッコ。


今大会の開催国はドイツ。

特設会場ラインハルトドーム内部には黒一色で不気味に光る通電された巨大な金属塊が、かすかな唸り音を出しながら置かれていた。

この塊の中は地球が丸ごと再現されリアルな戦争シミュレーションがロードされている。


各参加国代表の手によって終戦のコードが打ちこまれ、完全に戦争終結の手続きが完了した。

これでやっとクローズされた世界から、各国の関係省庁、関係民間企業は、戦争で得られた大切な分析結果を取り出す事ができる。

架空世界内部で活躍した架空の兵士、または民間人の選別、抽出、分析に取りかかれる。


今回、フルオフィシャルで参加している企業の中の一社、《冥界重工》。

人物プログラムの責任者彩多キミトシは自分が設計し、関った人物の中で生き残ってくれた83名をリストアップさせていた。

「うーん。今回、100名くらいは残ってくれると期待していたんだが…まあ内容が大事か!!」

とそこそこ、この生存者の数字には満足していた。


今回の戦争で収録された膨大なデータは、リアル世界での国防に、そして、民間企業の更なる利益追求のためにありとあらゆる分野の役に立てられる。

2次使用され、3次使用され、加工がなされて利益を生みだし消費されるのだ。

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