第2話

今から11年前の2018年8月23日付けの大東亜科学技術新聞、先端技術誌面のスミに小さな記事が載せられた。

「コンピューター内で大規模戦争を完全に再現・フル3次元化に成功」

と、そう印字されていた。

詳しい内容は、こうだった。


冥界重工は、14日、極高速電算機を使い、複数国家間で極度の緊張状態の末、核爆発をともなう戦争に発展していく様子を電算機内の三次元空間内に再現する実験に初めて成功した。


同社は今後、スペクトラムアルファー社製の高速処理システムを追加導し、さらに計算能力を高め、参戦国、参戦兵士の多様性を追求する計画。


同システムは、以前から研究され蓄積されている人体データなどを利用しており『国際人格意識保護条約』に違反せずに複数国間での戦時下で起こりうる国内国外の心的動向を正確に再現出来、分析ができるという。


電算機による再現実験は八王子研究所、室蘭研究所などで同時に実施した。


電脳空間では兵器による衝撃波に見舞われる過酷な条件をあえて与えることになっている。

そうして攻撃を行った側の軍、民間人、及び対戦国その周辺国、友好同盟国側の軍、民間人の肉体的、精神的な変化データが初めて正確に得られた。

追加導入される特別仕様の電算機は、来年2月にフル稼動する。


すべてはこの時から始まった。

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