第29話
3月も下旬になると、昼間は雪解けが進む。
しぶきを上げながら車が行き交う。
まだ春という言葉は似つかわしくないが、少しづつ、少しづつ、確かな足取りで冬がフェードアウトしていく。
あれから賀代の噂をたびたび聞いた。
妊娠していたとか、故郷に帰ったとか、いろんな話が聞こえてきたが、どれが本当でどれが嘘なのか確かめる術は今はない。
確かめる事ができたとしても、どうしようもないことだ。
雪が突然なくなって春が来ることがないように、僕の心から賀代が突然消える事はないだろう。
少しづつ、少しづつ、雪がとけるように、賀代の記憶は僕から消えていくのだろう。
こうして僕の、僕らの冬は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます