第23話
金に困った僕は、ランドローバーを売った。
金に困っていたというのもあるけど、東京での暮らしや、賀代のことをリセットしたいというのもあった。
そこそこ高値で売れたけど、また遊んで暮らそうという気持ちにはなれなかった。
北海道ではクルマがないと不便だから、中古の軽自動車の4×4を手に入れた。
ランドローバーとは比べようもなかったが、これが今現在の僕の身の丈なのだ。
そして、本気で仕事探しを始めた。
求人誌をめくる。
やはり映像クリエーターの求人はなかった。
「こうなったら、バカでも出来る営業にするか…」
僕は営業の仕事なんて誰でもできる最低辺の仕事だと決めつけていた。
求人誌の「営業」のページに載っている会社全てに通し番号をふった。
そしてあみだくじを作り、どの会社にするか決める。
「どの会社になったとしても、そこを受けに行く!それが今回のルール!」
あみだくじをなぞった先の数字は22番。
求人誌で22番をふった会社を見てみると、「建築用木材の提案営業・丘珠コーポレーション」と書いてある。
「けんちくようもくざいのていあんえいぎょう?何だこりゃ?こんなの全然興味ないし。ま、自分で決めたルールだ。この会社を受けに行こう。どうせ落ちるだろ。」
賀代の事もあり少々ヤケになっていたから、その会社の面接を受けに行くことにした。
面接は数日後に行われた。
社長が直々に面接をした。
従業員数が10人程度の零細企業。
20分ほど、どうということのない雑談が続いた。
別に採用されなくても構わなかったから、普段の自分と変わらぬ態度で話をしていた。
「で、いつから出勤できるんだい?」
「え、あの~、明日からでも大丈夫ですよ。」
「じゃあ、明日からよろしく頼むよ。」
予想もしなかった展開。
明日から僕は建築用木材の営業マンなのか。
そう思うと少し悲しくなったが、これも何かの縁だと思い、この会社で働くことにした。
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