第22話

昨晩は、シャワーも浴びずに、おまけに服を着たままで眠ってしまっていた。


一夜明けて、幾分冷静な気分になっている。


クヨクヨしたってどうしようもないじゃないか。

街に繰り出そう、何か美味しいものでも食べに行こう。


クルマに乗り、とりあえず走り出した。

手持ちのカネがないことに気付き、銀行に寄る。

いつものように10万円を引き出そうとしたら、


"残金が不足しています"


え?あんなにカネがあったはずなのに何かの間違いでは?


残高照会してみると、もう7万円しか残っていなかった。


「ダメだこりゃ!」


僕は笑った。

人は、究極状況の中では笑いしか出ないものらしい。


「もう、何ひとつ残ってないんだな…」


1万円しか引き出さなかった。


そして、観光客しか行かないような割高なラーメン屋に行き、麺が見えないほどにチャーシューが乗っているチャーシュー麺を食べた。

これが、今の僕にできる贅沢の上限だ。


「もう失くすものは何もない。ギアを入れ直して再始動だ。」


拳に力を入れて、そう言ってみた。


無理にでも自分を鼓舞しなければ、自暴自棄になって潰れてしまうから。

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