第15話
そして、約束の週末がやってきた。
温泉を案内してもらった時と同じように、バス停の近くで賀代を待った。
約束の時間に少し遅れて賀代が現れた。
「シン君おはよう!」
「おはよう!」
「はい、これ。」
賀代は温かい缶コーヒーを差し出した。
「お、ありがと!」
ひとつひとつの出来事がただただ嬉しい。
中山峠越えのルートを避け、5号線を行く。
余市、小樽、銭函。
札幌を過ぎたら275号線に入る。
そして275号線をひたすら北上する。
一面の雪景色は、白銀の世界というよりはむしろ墨絵の世界と言ったほうがしっくりとくる。
月形、新十津川、北竜。
275号線は、僕が北海道を1人旅しているときに何度も通ったルートだ。
だが、今日の275号線はひとりで旅していたときとは違って見える。
賀代と過ごす現実と非現実の境界線のようだ。
「運転変わろうか?免許持ってへんけど。」
「免許持ってないならダメだよ!」
「もちろん冗談やで。時々休憩せなあかんよ。」
「わかったよ。どこかコンビニにでも寄ろうか。」
途中、、コンビニに寄ったり道の駅に寄ったりしながら、ただ美深町を目指した。
雪降る中を走るランドローバー。
それは時折、冬用ワイパーでも難儀するほどだった。
数時間走ると、美深町が見えてきた。
そして、戸崎さんの運営する民宿「夢のひととき」に着いた。
美深町は、夏に旅していた時に立ち寄った「旅人祭り」以来だ。
雪に覆われて別世界となった美深町に、僕と賀代は降り立った。
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