第14話
札幌への帰り道、あのときと同じように僕はニヤけながらハンドルを握っていた。
「じゃあ、今週の土曜日の朝8時、バス停の近くで待ち合わせってことでいいかな?」
「うん、朝8時な。遅れんといてな。」
ついさっきの喫茶店での会話を思い出しながら。
途中、中山峠の「峠の茶屋」に寄ってみた。
一般ドライバーのほとんどは向かいの道の駅に行くのだが、僕は敢えて峠の茶屋を選んだ。
「観光バスはな、道の駅じゃなくて峠の茶屋に停めるんやで。なぜだかわかる?いろいろと大人の事情があるからなんやで。」
賀代が言ってた事が本当か確かめたかったのだ。
確かに峠の茶屋には観光バスがたくさん停まっていた。
そんなことは大したことでもないし、どうでもいいことなのかもしれないが、賀代との会話が幻じゃなかったと確かめられることがただ嬉しかった。
札幌に戻るとすぐ、白川さんの所に行った。
「おっ、シンちゃん!まあ上がれよ。」
白川さんの所には、当たり前のように鹿島さんと野村さんもいた。
みんな少し酒が入ってるようだ。
僕も鹿島さんに勧められるままに焼酎を飲んだ。
「おい、シン!今週の土曜日にまたみんな集まるぞ!お前も来るよな?」
「いえ、今週の土曜日はちょっと用事がありまして…」
「さては…。また賀代ちゃんとデートだな?」
「デートだなんてそんな…。ただ、賀代ちゃんが戸崎さんに会いたいって言うから美深に連れて行くだけですよ。」
「お前はおとなしそうに見えて、なかなかやるなぁ。」
「いえいえ、そんなんじゃないっす。」
黙って飲んでいた野村さんが突然、
「まあ、シンちゃんが楽しいならそれでいいじゃん。行ってらっしゃいよ。」
と堰を切ったように言った。
何か言い足りないような野村さんの様子が気になりはしたが、
「楽しい時間になるように頑張るっす!」
と答えるに留めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます