第8話

ランドローバーは名残惜しさを乗せて賀代の住む町へと走る。


「今日は賀代ちゃんのおかげで最高に楽しかったよ。」


最初に待ち合わせたバス停の近くに一旦停めた。


「もう暗くなったし、ここで降ろすのは少し心配だな。家まで送るよ。」


「この辺は慣れてるから大丈夫やで。それに、ウチは子供やないし。」


賀代は少し笑った。


「じゃあ、ここで見送ることにするよ。あ、次はいつ会おうか?」


「ちょっと予定がわからへんから…。時々電話くれへん?」


「うん。賀代ちゃんの都合のいい時があったら教えてね。僕はいつでも暇だから。」


「うん、わかった。またな。気をつけて帰ってな。」


夜の闇に消えていく賀代の後ろ姿をぼんやりと見送った。


次はいつ会えるのかな…


札幌に戻ると、また時間を持て余すだけの毎日が始まる。


「あ…」


白川さんに連絡をするのを忘れていた。

白川さんとは、例の民宿で出会った旅人である。


「札幌でライダーハウスをしているから、いつでも遊びに来いよ。」

そう言われて連絡先を交換していたのに、なんとなくそのままになっていたのだ。



白川さんもまた、僕と同じように、旅路の果てに札幌に移住した人である。


白川さんの家は、僕の所からそう遠くない。


「もしもし、白川さんですか?民宿でお会いした大友ですが…」


「大友?誰だったかなあ?」


「ギター持って歌ってた男です。」


「あー!シンちゃんか!今どこにいる?札幌か?すぐ遊びに来なよ!」


「今から行ってもいいんすか?それではお邪魔させていただきます!」


フットワークの軽さが僕の自慢だ。


民宿ではほとんど賀代とばかり話していたから、白川さんがどんな人なのかはよくわからない。


それでも旅人同士だから、すぐに打ち解けられるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る