第7話

案内された食堂は、時代に取り残されたような古びた佇まいだった。


「ここ・・・で間違いないかな?」


「うん、ここやで。」


僕は、このような食堂に入るのは、極力避ける性分だ。

潔癖症というわけではない。

この手の食堂は当たり外れが激しく、自分好みの味なのか予想できないから。


バブルの恩恵で少しばかり儲けたから庶民の味など口に合わないという理由では決してない。

高級店は高級店で、やはり店選びには無駄な労力を使うものだから。


そんなめんどくさがり屋の僕は、すかいらーくやガストによく通っていた。

面倒くさくない、という理由だけで。



「ここ、ウチは好きで良く来るんやけど…シン君は平気?」


「あ、ああ。平気どころか、こういう庶民的な食堂が大好きなんだよ。」


相手次第で、心にもないことを平然と言えるのは男の才能なのだと、何かの本で読んだ気がする。



「ここの焼き魚定食、ホンマおいしいんやで。シン君も同じでええな?」


賀代に勧められるままに焼き魚定食を注文した。


「お、これ、結構いけるじゃん!」


「な、うちの言うとおりやろ?」


食事なんて、すかいらーくやガストで済ませばいいという僕の態度は、もしかすると他人にはつまらなく映っていただろうか?


それとも、賀代と一緒だから美味しく感じられるのか?



それにしても、時が過ぎるのがあまりにも早い。

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